宏碁(エイサー)は3日、上海に続く中国第2経営本部を重慶市に設置し、同地を昆山に次ぐ新たな世界運営センターとする計画を発表した。中国西部市場での販売強化と、ノートパソコン世界最大手の目標に向けての企業競争力向上が狙いだ。12月初めに同市と投資契約の締結を予定している。4日付工商時報などが報じた。
重慶進出についてエイサーは、中国政府による内陸部発展政策を好感したこと、同市が有利な投資条件を提示したことが決定要因となったと説明した。エイサーの中国市場の売上比率は現在7%で、2013年には米国を上回る20%に拡大すると好感している。
さらに、重慶は金融メカニズムが整備され、労働力も豊富、水や電力の供給などインフラも整っていることに加え、物流に極めて便利な位置にあることも進出理由に挙げた。同日付経済日報によると、これまで上海から海運で欧州へ出荷するには37日間が必要だったが、重慶から鉄道で新彊、モスクワを経由して輸送すれば、わずか13日に短縮できるという。エイサーは、欧州、中東、東南アジア向け製品で重慶からの出荷比率を高めることを検討している。
PC世界4大ブランドが四川・重慶に拠点
重慶には既にノートPC世界シェアトップの米ヒューレット・パッカード(HP)が生産拠点を構えており、同社のサプライヤーである、鴻海科技集団(フォックスコン)、広達電脳(クアンタ・コンピュータ)、英業達(インベンテック)も進出している。また、同市に隣接する四川省の成都市には、デルおよび聯想集団(レノボ)が経営・生産センターの設置を決めており、エイサーの重慶進出決定により、世界の4大PCブランドが四川・重慶に拠点を構えることになる。
コンパルがエイサー捨てる?
エイサーは工場を持たず、ブランド運営のみを行っているため、重慶を生産拠点とするには受託生産メーカーの協力が必要となる。これについて同社は、「今後、パートナーに説明し協力を求める」としている。
エイサーは現在、仁宝電脳工業(コンパル・エレクトロニクス)、緯創資通(ウィストロン)、クアンタ、和碩聯合科技(ペガトロン)をノートPCの主要委託先としているが、このうちクアンタは既に重慶に進出、ウィストロンも年内に進出を発表する可能性が高い。しかし、クアンタの進出はHPの要求に応じたもので、さらにエイサー最大の委託先であるコンパルについては先ごろ、四川省成都市に工場を設置することで現地政府と契約を交わしたと報じられており、「エイサーを捨てて、レノボかデルと手を結ぶのではないか」との憶測を呼んでいる。
ASUSも重慶進出か
また、現在PC世界シェア5位の華碩電脳(ASUS)も重慶進出を検討しており、既に同市政府と交渉を行っていることを認めている。ただ、張偉明・同社広報担当は「経営本部の設置は影響が大きいため慎重な検討が必要で、年内に発表することはない」と語った。
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