ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム グループ概要 採用情報 お問い合わせ 日本人にPR

コンサルティング リサーチ セミナー 経済ニュース 労務顧問 IT 飲食店情報

パン職人世界一の呉宝春さん、陰に日本人の力


ニュース 社会 作成日:2010年11月22日_記事番号:T00026676

パン職人世界一の呉宝春さん、陰に日本人の力

 
 国際的な舞台で活躍する台湾人はメディアで「台湾の光」と称えられるが、料理界の「台湾の光」といえば屏東県出身のパン職人・呉宝春さん(41)の名前が挙げられるだろう。今年3月、フランスのパリで開催された世界一のパン職人を決定する「マスター・ド・ラ・ブーランジュリー(LES MASTERS DE LA BOULANGERIE)」に参加し、台湾先住民族の小米酒(アワ酒)と果物の荔枝(ライチ)、バラの花びらを使った「米醸荔香麺包(小米酒ライチパン)」を作って見事優勝し、一躍有名になった。

 この世界一のパン職人が「師匠」と呼ぶ日本人がいるということは意外と知られていない。岡山県出身で在台23年のパン職人、野上智寛さんがその人だ。野上さんは台湾人女性と結婚し、現在は桃園県蘆竹郷でパン屋「野上麺包坊」を経営している。同店には遠くから車で買いに来る人も多く、毎日長蛇の列ができる有名店だ。

 呉さんは、中学卒業後、台北で修業を積んでパン職人になったが、2006年に縁があって野上さんと知り合い、それまでの台湾式パンの世界を飛び出した。野上さんに基礎からフランスパンの作り方を学ぶことになったのだ。

 呉さんによると、野上さんは柔らかくさっくりした食感を出すため、2時間ごと8回もパン生地をこねるので、夜中も熟睡することはないとか。呉さんはそんな職人魂を持つ野上さんを、「まるで尽きることのない宝の山のよう。私の師匠であり恩人だ」とたたえる。

 2年前、呉さんは野上さんから1本のステンレス製のクープナイフを贈られた。生地に切れ目を入れるための道具だが、それは市販のものではなく、わざわざ特注したものだった。呉さんは「師匠は私を認めて激励してくれた」と感動し、値段のつけられない宝物として大切にし、コンテストにも持参して使った。

 呉さんはこのクープナイフを、今度は自分の弟子である張泰謙さんに贈った。師匠から弟子へと職人の技を伝授する意味が込められたこのナイフは、12年のパン職人コンテストに参加する張さんが大切に使うことだろう。