行政院主計処の22日発表によると、10月の失業率は前月比0.13ポイント低下し4.92%(季節調整後は4.96%)となり、2008年12月以来、23カ月ぶりに5%を下回った。景気回復により民間投資が拡大したほか、政府機関による雇用者が、昨年同期に比べ9万7,000人も増加したことも改善に大きく貢献したもようだ。ただ派遣やパートなど非正規職員としての採用が増えたため、平均月給は依然金融危機前の水準を回復しておらず、労働条件は悪化しているとの声も聞かれる。23日付蘋果日報などが報じた。
主計処によると、10月の失業人口は前月比1万4,000人減、前年同月比10万7,000人減の54万6,000人となった。また就業人口は前月比2万9,000人増、前年同月比25万人増の1,056万人だった。
10月失業率の下げ幅0.13ポイントは、過去10年の同月平均0.03ポイントを大きく上回るもので、これについて劉天賜・主計処第4局副局長は、景気好転を受けての民間投資増加が影響したもので、特に運輸・倉庫、卸売・小売業での就業増が目立ったと指摘した。また、政府の就業促進政策により、10月の政府機関による雇用人数は昨年同月の95万9,000人から105万2,000人まで大幅に増加しており、これがなければ10月失業率は5.34%にとどまっていたと強調した。また劉副局長は、特殊な状況が発生しなければ失業率の低下は春節(旧正月)前まで続くとの見通しを示した。
なお3月に「年内に失業率が5%を下回らなかったら辞任する」としていた呉敦義行政院長は、目標を達成したことを受けて「これが最終目標ではない。来年は最低でも通年平均で5%以下に抑えることが求められる」と強調した。
求人が求職上回る=104人力銀行
このほか、大手求人求職サイト、104人力銀行のデータベースでは、11月に入り金融危機発生以来初めて求人件数(34万9,000件)が求職者人数(31万5,000人)を上回った。特に金融関係、美容関係、営業・販売、建設業などで人手が不足しており、中でも保険業への就職希望者は1人当たり約29件の求人がある状況となるなど労働市場の好転もうかがえる。
ただ一方で、中国文化大学労工関係系の李健鴻助理教授は、「就業率や労働参加率の伸びは限定的で、『就業意欲はあるが仕事を探していない』人が減っていないことを示しており、失業率低下は労働市場の実情を反映したものとは言えない」と指摘している。
景気回復も昇給は低調
また、同日主計処が発表した1〜9月の平均月給(ボーナス、残業手当など非経常性給与を含む)は前年同期比6.44%増の4万5,471台湾元(約12万5,000円)、平均経常性給与(ボーナスなどの特別賞与を含まず)は同1.96%増の3万6,175元と、前年比では増加したものの、いずれも金融危機の発生した08年同期だけでなく、07年の水準にも届かなかった。
これについて就職情報サイト「Career就業情報」の臧聲遠編集長は、「政府が最低賃金の大幅引き上げを避けていることや、台湾の労働者が権益を強く争わないことなどから、景気好転後も台湾企業は回復具合に応じた調整を行っていない」と指摘した。
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