ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム グループ概要 採用情報 お問い合わせ 日本人にPR

コンサルティング リサーチ セミナー 経済ニュース 労務顧問 IT 飲食店情報

2010五都決戦!(3)国民党現職が再選濃厚〜台中市


ニュース 政治 作成日:2010年11月24日_記事番号:T00026735

2010五都決戦!(3)国民党現職が再選濃厚〜台中市


 台中市は国民党の基盤がより強く、同党の現職、胡志強氏(62)の再選が有望視されている。胡氏は台中市を台湾のハブ都市と位置付け、「香港、シンガポールを超える国際都市に」と訴える。対抗馬の民進党・蘇嘉全氏(54)は、胡氏が当選した場合、任期が14年に及ぶため「長過ぎる」と多選を批判。屏東県長時代の地域活性化の実績を武器に「変革」を訴え、農業従事者など庶民層の取り込みを狙う。
 
T000267351

 
国際派VS庶民派

 国民党の実力者である胡氏は、軍官だった父とともに国共内戦で台湾に渡り、台中市で育った。政治大学外交科を卒業後、英国サウサンプトン大学、オックスフォード大学で修士、博士号を取得。台湾へ戻った後、中山大学教授を経て政界へ転身した。

 李登輝政権下の1991年から96年まで、行政院新聞局長を務める。その後、駐米代表を経て、外交部長に就任。民進党への政権交代後の01年、台中市長選に立候補し当選、地方政治の舞台に転じた。05年に再選し現在に至る。

 蘇氏は台湾海洋大学食品科学系を卒業後、教師や企業幹部を経て、86年の民進党立ち上げに参加。97年、屏東県長選に出馬し当選、マグロ漁で有名な東港鎮で「黒鮪魚文化季」を行うなど地域活性化を推進した。

 09年、民進党秘書長に就任。今年5月、台中市長選への出馬を決め、本籍を台中県豊原市に移して、「当選後も台中に住み続け、地元市民の声に耳を傾ける」と地域に密着する姿勢をアピールしている。

風紀乱れた街を芸術の街へ

 台中市は、暴力団の勢力が強く治安が悪いことから、「風化城(風紀の乱れた街)」という不名誉な別称がある。胡市長は市長就任時から、「風化城を文化城へ」というスローガンを掲げ、品性ある芸術文化を特長とする街づくりを目指してきた。大型屋外劇場の「円満戸外劇場」、「大都会歌劇院(台中メトロポリタン・オペラハウス)」(13年完成予定)など文化施設の建設を推進。また03年から無料で開催している「台中爵士(ジャズ)音楽節」は、今年延べ75万人の観客を動員、市民生活に浸透している。

 一方、経済・産業振興では、10月に落成した新市政府周辺などの大型土地開発、中部科学工業園区(中科)や台中工業区などが集まる産業クラスター「大肚山科技走廊」への企業誘致に力を注いできた。また、市民1人当たりの長期債務残高を02年の3,840台湾元から09年には230元まで減少させ、財務体質改善に成功したとアピールしている。

 胡氏が支持を集める大きな理由の一つにその人柄が挙げられる。社交的でユーモアがあり、多くの市民に親近感を抱かれている。元女優の邵曉鈴夫人とのおしどり夫婦ぶりも有名だ。06年、夫人が交通事故で左腕をひじから切断、言語障害が残るという惨事に見舞われた際、安否を気遣い号泣する胡氏の様子は台湾中の同情を集めた。

 今回の選挙では台中市の国際化をアピール。「県市合併後、台中市の面積は香港の2倍、シンガポールの3倍になる。観光資源、産業の規模は両都市をしのぐ」と自信をみせる。台湾高速鉄路(高鉄)、港湾、空港、という陸・海・空の交通網を擁する優位性、さらに台北・高雄の2大都市の中間に位置し、中国とも近いという好立地を生かして競争力を高め、国際都市への発展を訴える。

治安改善を争点に

 胡氏は、台中市の犯罪発生率を05年〜09年で65.56%低下させたが、内政部警政署による「犯罪指標犯罪率」調査によれば、犯罪発生率(人口10万人当たりの犯罪件数)はそれでも03年〜08年の6年間連続でワースト1位。さらに今年6月には、暴力団幹部の射殺事件現場となった事務所に、警察官が頻繁に出入りしていたことが発覚、癒着関係が明るみになり市民を失望させた。

 これに対し蘇氏は、陳水扁政権時代、警政署を管轄する内政部長を担当していた経験をアピール。事件に迅速に対応する「打撃犯罪特別警官隊」の設置や、路上監視カメラの増設、地域パトロールへの補助金などを掲げ、「2年間で台中の治安を改善する」と気勢を上げる。

 また、胡氏が前回の選挙で公約したニューヨーク・グッゲンハイム博物館分館誘致案も実現できず、また国際会展中心(国際会議センター)建設は建設会社との契約が解除され、予定地が放置されたままになっている点などを「公約破りで実行力不足」と批判。再選はふさわしくないと訴えている。

 国民党寄りの中国時報による16日付の最新支持率調査では、胡氏47.1%、蘇氏40.1%。その差は縮まりつつあるものの、依然胡氏有利の情勢に変化はない。民進党は「台中で勝てば5都市で勝てる」ほどの最も困難な選挙区とみており、残りわずかな日数を、中間層の票獲得に力を入れる。

【杉山悦子】
T000267352