26日午後8時20分ごろ、連戦・国民党名誉主席の長男で同党中央委員を務める連勝文氏(40)が、台北県永和市の選挙集会で壇上に立ったところ、男に顔面を撃たれ、重傷を負った。容疑者は殺人未遂の現行犯で逮捕された。容疑者に政治的動機はなかったもようだが、事件が直轄市長選の投票日前夜に起きただけに、選挙情勢に影響を与える結果となった。
銃撃を受けた連勝文氏。顔の治療・回復には2年間かかる恐れもあるという(中央社)
連勝文氏は直轄市長選と同時実施される新北市議選に出馬した陳鴻源氏(国民党)の選挙集会で応援演説を行うため、壇上に上ったところ、銃を持った男が連勝文氏に突進。そして、連勝文氏の首を片手で押さえ、けん銃を1発発砲した。銃弾は連勝文氏の左ほおから右こめかみ下へと貫通。さらにステージ下にいた男性(29)が流れ弾を受けて死亡した。
連勝文氏は台北市の国立台湾大学医学院附設医院(台大医院)に搬送され、緊急手術を受けた。銃弾は脳を外れており、命に別条はないという。
逮捕されたのは、地元暴力団メンバーとされる林正偉容疑者(48)で、警察と検察で取り調べを受けているが、動機や事件の経緯をめぐっては依然不可解な点が多い。
28日付聯合報によると、林正偉容疑者は連勝文氏を陳鴻源氏と誤認し、銃撃に及んだと供述しているという。動機については、「10年前に自分の父親と陳鴻源氏の父親の間に土地売買をめぐるトラブルがあった」と話しており、警察は動機に政治的な背景はないとみている。
しかし、連勝文氏は側近に対し「容疑者に自分の名前を呼ばれた」と話しており、陳鴻源氏と誤認したとの供述に疑問を投げ掛けた。陳鴻源氏も「集会では(名前入りの)たすきを掛けており見間違うはずがない」と主張した。
銃撃事件は、直轄市長選での国民党支持者の投票意欲を高め、同党有利に働いたとの見方が有力だ。
台湾の選挙では、2004年の総統選でも投票前日に民進党の陳水扁総統と呂秀蓮副総統候補(いずれも当時)が台南市で銃撃に遭い、僅差で当選を果たした。その際に敗れたのは国民党の連戦氏だった。