「馬英九総統の中間評価」という意味合いが強かった今回の直轄市長選挙において、国民党が台北市、新北市、台中市の現有勢力を守り、取りあえず「合格」の評価を得たことで、馬総統が2012年総統選に再選を目指して出馬することが確定的となった。対する民進党は、新北市長に立候補した蔡英文・同党主席と、台北市長に立候補した蘇貞昌氏がともに落選したことで、この2人が次期総統選に出馬する可能性が高まった。28日付中国時報は、新旧世代を代表する両氏が今後、総統立候補をかけて正面対決することになると指摘した。
蔡主席は選挙で連日市場などを巡り、「知的でクリーンだが世俗とは距離がある」といった従来のイメージからの脱却を図った(27日=中央社)
政治家となって以来、実質的に今回初めて選挙の洗礼を受けた蔡氏は、地方行政に関する経験不足が指摘され、さらに新北市長選の国民党候補は、同党きってのエリート政治家である朱立倫氏だったことや、連勝文氏銃撃事件の発生など、不利な情勢にもかかわらず台北県長・新北市長選で同党初の100万票以上を獲得して善戦し、評価を高めた。
一方、蘇氏は今回、台北市長選で勝利の可能性もあるとみられたものの、結局、中間層を十分取り込めず、総統選出馬に向けて勢いを落とす結果となった。しかし、同氏は同党支持者の間で根強い人気を誇り、依然有力な候補であることは間違いない。
また今回、台中市長選で国民党現職の胡志強候補に約3万1,000票差まで迫まる予想以上の大健闘を見せた蘇嘉全氏は、立候補するまで同党秘書長という要職にあって蔡主席を支えていた。このため、次期総統選では、蔡主席が総統候補、蘇氏が副総統候補に選ばれる可能性が高まったと中国時報は指摘している。
なお、民進党内部では総統候補としてほかに、前回総統選に出馬した謝長廷氏、呂秀蓮前副総統、元主席の游錫コン(コンは方2つに土)氏、同党ベテラン立法委員の蔡同栄氏、独立派長老で元総統府資政の辜寛敏氏、民進党創設者の一人で06年に離党した林義雄氏の8人が挙がっているという。