事前に最も接戦と報じられていた台北市は、国民党の現職、郝龍斌候補が79万7,865票(55.65%)を獲得し、民進党の蘇貞昌候補に圧勝した。前回2006年、郝氏の票は69万2,085票で、泛藍(汎国民党陣営)全体では75万3,161票。投票率は64.52%だった。今回は投票率が70.65%まで上昇したことが、郝氏の票を押し上げた。
再選を果たした郝氏(左)は「今後4年間、台北市の経済発展に全力を挙げる」と語った(27日=YSN)
郝市政では、新生高架道路改修工事での不正をめぐる楊錫安秘書長(10月に解任)の起訴や、台北国際花卉(かき)博覧会(花博)での高額調達発覚、猫空ロープウエーの1年半にわたる運行停止、都市交通システム(MRT)内湖線の相次ぐトラブルなど、さまざまな問題が続発した上、行政の対応能力も疑問視された。また、花博以外で目立った業績もなく、国民党の強い選挙区でありながら今回は蘇氏と接戦になると予想されていた。
しかし、結果は予想外の大勝となった。投票日前日の26日の夜、連戦・国民党名誉主席の長男、連勝文氏が台北県永和市で市議候補者の応援活動中に銃撃を受けた事件が起き、これによって国民党支持層ががぜん選挙に関心を持って投票意欲が一挙に高まったこと、および中間層が同情票を投じたことが最も大きな要因とみられる。前回から10万票以上を上乗せしての勝利によって、郝氏は今後4年間市政で大きな問題が起きなければ、中央政界でより高い地位に登れる可能性も出てきた。
一方、蘇貞昌氏は意外な大敗となった。厚い国民党の支持層を前に、民進党カラーを出さず選挙戦を盛り上げない「冷却化」戦術に徹してきたが、06年の同党謝長廷候補よりも得票数で10万票以上、得票率で約3ポイント上回ったものの、有権者数204万人の台北市で得票数62万8,000票では、銃撃事件が起きていなくてもやはり勝てはしなかった。
蘇氏はかつて台北県長を2期務めたため当選できるとの呼び声が高かった新北市ではなく、台北市長への立候補を真っ先に決めたのは、台北市で「順当に」敗れた上で12年の総統選に出馬を望んでいるためと伝えられていた。しかし、副総統候補として臨んだ08年総統選、今回の台北市長選と2回連続で大敗を喫したことによって、党内で声望を落とし出馬が困難になる恐れも出てきた。