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民進党が党勢回復、総統選は対中政策が課題に【図】


ニュース 政治 作成日:2010年11月28日_記事番号:T00026834

民進党が党勢回復、総統選は対中政策が課題に【図】

 
 今回の5直轄市長選は、就任2年半を過ぎた馬英九政権にとっての中間評価、および2012年の次期総統選の前哨戦の意味を持っていた。
 
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 「3市取れなければ敗北」と宣言していた国民党にとって、現有の台北市、新北市(現台北県)、台中市を維持できたことは、対中交流拡大を中心とした馬政権の政策が有権者に是認されたことを意味する。このため、対中交流は今後も方向性に大きな変更はないとみられる。景気にとっても政治面での懸念が排除されプラスとなる。馬総統は側近の金溥聡秘書長が引責辞任することもなく、12年の次期総統選に向けて準備が容易になる。

 5市全体の得票率では民進党がほぼ5割の49.87%に達し、国民党にとって大きな圧力となった。民進党は台北県・新北市長選で過去最高の得票を記録するなど党勢を完全に回復させた。また総統選の有力候補になるとみられている蔡英文主席、蘇貞昌元主席がともに落選したことで、候補者選定がスムーズになった。

ECFAが埋没
 
 今回の直轄市長選は、中国がテーマにならなかったことが大きな特徴だった。国民党は「傾中」批判を嫌い、馬政権の最大の業績であるはずの海峡両岸経済協力枠組み協議(ECFA)を一切取り上げなかった。民進党もECFAを批判してきた手前、対中交流のあり方、経済政策の手法を問われるためこのテーマを避けた。ただ、総統選は中国との交流を中心とした今後の台湾の方向性がテーマになるため、特に民進党にとって大きな課題となりそうだ。

 呉乃仁・民進党秘書長は今回、「民進党は必ずしも統一・独立で選挙を戦う必要はなく、中国の要素が入って変化した台湾経済に向き合うことが台湾人にとってより重要だ」と語っている。こうした認識の下、同党は陳水扁前総統や、08年総統選の謝長廷候補に見られたような国民党へのネガティブキャンペーンを行わなかった。台湾人意識に基づく反中的な国民党批判を行えば、支持者の留飲を下げることはできても中間層の支持獲得にはつながらないとの判断で、同党の姿勢の変化は今後の台湾の選挙文化の成熟に貢献すると考えらえる。