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作成日:2010年12月1日_記事番号:T00026894
公衆トイレを封鎖、住民思いの里長が落選で豹変
台北市中正区の牯嶺公園は、小さいながらも毎日多くの人が集まる憩いの場だ。その公園の公衆トイレが最近突然、閉じられてしまった。よく利用されていただけに、その不便さからメディアに投書する人まで現れた。
ことの起こりは11月27日の選挙。5直轄市長選、市議会議員選と同時に行われた里長選挙で、中正区網渓里の現職・林宝猜里長(50、女性)は再選に失敗。公衆トイレを封鎖したのはこの林里長で、落選の腹いせだというから穏やかでない。
「里」というのは台湾で最少の行政単位で、「里長」は公選の町内会長に当たる。住民のために生活の便宜を図ったり、近隣トラブルを解消したりと、いわば地域住民に奉仕する何でも屋的な存在だ。
網渓里にある牯嶺公園は、中正区公所(区役所)が管理しているのだが、面積が小さいため、もともと公衆トイレがなかった。林里長が「公衆トイレは私が身銭を切って設置したもの。落選したのだから開放をやめる」と息巻いたように、3室あるこのトイレは、彼女が住民のためにと自費で約40万台湾元を出して6年前に設置したもの。林里長はほかにも、公園内の池に循環モーターを設置して魚を放ち、月々の電気代2,000~3,000元を自己負担している。
林里長は、落選を恩を仇で返されたように感じたのだろう。公衆トイレを封鎖したのは、不便を感じさせることで自分が住民のためにしてきた努力を思い知らせようと考えたためのようだ。
ところが、里民が同情してくれるどころか、「自分勝手すぎる」と強い批判を招いてしまった。このため林里長は一転、再びトイレを開放した。とはいうものの、落選に対する憤りはまだ冷めやらぬ様子で、来年1月15日の里長退任後はトイレを取り壊し、池のモーターへの電力供給も止めると宣言した。
結局、公園を管轄する中正区公所が仲介役となって、林里長と話し合うことになるらしい。あと1カ月半の間にうまく解決できればよいのだが。