遠雄建設が大手不動産開発企業として初めて本格的な中国進出に乗り出す。複数の外資系企業と提携して合資会社を設立し、北京、上海および二級都市で不動産開発事業を行う計画で、早ければ年末から、遅くても来年明けには事業を始動する考え。政府による投資額の上限規制により台湾不動産業界の中国進出は進んでいなかったが、遠雄が「合法ルート」の成功例となれるかどうか注目されている。20日付工商時報が報じた。
遠雄企業集団の趙藤雄董事長は19日、「遠雄建設にとって中国は現在最も力を注いでいる新興市場で、提携する外資企業を選定中だ」と語った。すでに投資ファンドや生命保険会社をバックグラウンドとする金融機構などの外資系企業が、中国市場への共同進出を持ち掛けてきており、5、6社と商談中という。これらの外資企業は進出意欲はあるものの、不動産商品の企画力など専門知識を持つ経営チームを欠いており、遠雄にこの役割を求めているという。遠雄の提携先は1、2社となる見通しだ。
上限規制がネック
元大建設開発の黄仁勇総経理によると、台湾政府は中国不動産市場への投資について、「一社当たりの投資額は1,500万米ドル以下」の上限制限と、個別の案件審査を課している。一方、中国市場では早くから海外大手不動産企業による激しい競争が繰り広げられており、1件のプロジェクトで開発面積30万~50万坪、投資額3億~5億米ドルに上ることもあるという。こうした状況の下、投資審議委員会の審査を受けて合法的に投資を行う不動産開発業者はほとんどいないという。
趙董事長は投資の方針について、「政府の政策に従う」と表明している。「資金には制限があるが、人材にはない」として、ノウハウ輸出の形での外資との合資会社の設立であれば、法令に違反せず1,500万米ドルの上限規制もクリアして投資ができると指摘している。
計画しても事業進まず
趙董事長はすでに十数年前、上海に個人名義の遠中房地産発展公司をシンガポール企業として設立し、上海や昆山、北京で開発を行い利益を維持している。3年ほど前には中国最大の国営不動産企業、北京中房集団と提携覚書を交わし、中房集団も台湾進出の可能性を探りたいとしていたものの、中国側の政策の関係上、いまだに実質的な事業の進展はない。
遠雄のほか、不動産最大手の国泰建設では、中国進出案が2年前に株主総会で承認されており、収益が安定していてリスクの小さいオフィスビルなどの商用地への投資を計画しているが、投資額上限規制が足かせとなって、まだ具体的な進展はない。
郷林建設は中国の不動産市場に進出してすでに10年を超えるが、不動産開発による累計売上高は100億台湾元(約350億円)強だという。資金は中国民間不動産大手の北京万通実業集団、深セン万科集団などから得ている。