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クアンタ、受託価格を全面引き上げ


ニュース 電子 作成日:2011年3月8日_記事番号:T00028632

クアンタ、受託価格を全面引き上げ

 ノートパソコン受託生産大手、広達電脳(クアンタ・コンピューター)の梁次震副董事長は7日、中国での最低賃金上昇、原料価格の高騰、台湾元高などの要因を受け、新型機種、旧型機種の区別なく受託価格の全面引き上げを行う考えを示した。ノートPC受託生産業界は今年、台湾元が急騰した昨年よりもさらに厳しい経営環境に置かれるとの指摘が出ている。8日付工商時報が報じた。

 梁副董事長によると、引き上げは既に一部の顧客メーカーの了解を得られており、現在他の顧客と交渉を行っているところだ。同社は1月中旬、米ヒューレット・パッカード(HP)により、新型機種の受託価格引き上げが認められたと報じられていた。

 中国政府は5日開幕した第11期全国人民代表大会(全人代)で、今後5年間、労働者の最低賃金を毎年13%引き上げる目標を示した。これに先立つ2日、上海市は、4月1日より最低賃金を約14%引き上げ、1,280人民元(約1万6,000円)にすると発表している。

 クアンタは上海市の2カ所の生産拠点に従業員計6万人を抱えており、梁副董事長は原材料価格の上昇などの要因と合わせて、「受託価格の値上げは避けられない」との認識を示した。

影響額13億元も

 江蘇省昆山で従業員4万〜5万人規模の工場を操業する同業、仁宝電脳工業(コンパル・エレクトロニクス)は、同地の最低賃金が今年2月に18%上昇し1,140人民元となった。同社は「当社の給与水準は現時点で同業を上回る水準であり、今後状況を見た上で対応を決める」との姿勢だ。和碩聯合科技(ペガトロン)は上海で3万人以上、緯創資通(ウィストロン)が昆山と上海で2万人を雇用しており、最低賃金引き上げによるノートPC受託各社の影響額は13億台湾元(約36億4,000万円)以上に及ぶと試算されている。

 なお、ペガトロンは受託価格の引き上げについて「同業他社との競争も念頭に置かねばならない」との立場だ。華碩電脳(ASUS)を大手顧客とする同社は今年、宏碁(エイサー)、微星科技(マイクロスター・インターナショナル、MSI)など新規顧客を開拓し、東芝からも受注を引き戻す。市場シェア向上に取り組む上で、価格交渉ではそれほど優位に立てないというのが市場の見方だ。

タブレットブームもマイナス

 中国での賃金引上げの波はノートPC受託各社にとって大きなネックで、工商時報は、「今後数年、受託価格の全面引き上げは珍しくなくなる」との見方だ。

 アップルのタブレットPC「iPad」人気も、今年のマイナス要因に挙げられる。iPadを生産する鴻海科技集団(フォックスコン)を除く受託各社は、iPadの対抗機種の受注を手にできるものの、タブレットPCがノートPC市場を侵食する悪影響をカバーできるまでには至らないと観測されるためだ。今年のノートPC市場の成長率は10〜12%程度にとどまり、過去数年の高成長は再現されないとみられている。

 こうした状況から、受託各社は重慶や成都など、賃金水準の低い中国内陸部への生産拠点移転を加速させると予想される。

【表】