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米HPにパソコン事業売却説、台湾メーカーに打撃も【表】


ニュース 電子 作成日:2011年3月10日_記事番号:T00028686

米HPにパソコン事業売却説、台湾メーカーに打撃も【表】

 米ヒューレット・パッカード(HP)がパソコン事業部門を売却するとの観測が業界内で高まっており、売却先として、韓国サムスン電子の名前が挙がっている。事実ならば、サムスンはPC市場でのシェアを飛躍的に拡大することになり、エイサーなど台湾勢も戦略の練り直しを迫られる。

 HPのアポテカー最高経営責任者(CEO)は9日、ブルームバーグ通信に対し、クラウド技術の開発に全力を挙げる方針を示し、今月14日に今後の経営戦略について詳細に説明する考えを示した。この場でパソコン事業部門の売却に関する言及があるかどうか注目される。

 HPはPC部門の売却に向け、サムスン電子と聯想集団(レノボグループ)と接触したとされるが、業界では豊富な資金力を持つサムスンが売却先として最も有力視されている。サムスンの買収動機としては、▽エイサーなどによる「サムスン包囲網」に対抗する▽携帯電話端末や液晶テレビに比べ、ノートPC事業が弱い▽DRAMの出荷先を確保する──などの点が挙げられる。

 10日付工商時報などによると、HPの台湾法人、台湾HPの周信宏・個人システム事業群副総裁は市場のうわさについて、「聞いたことがない。コメントを差し控える」と述べるにとどまった。

 しかし、ノートPC受託生産大手、仁宝電脳工業(コンパル・エレクトロニクス)の陳瑞聡総経理は「確かにそういう話を聞いている。業界内にかなり前から伝わっている話だ」と指摘した。

調達比率の大幅低下も

 HPは現在、PC6,000万台の生産を委託しており、PC部門を売却した場合、台湾メーカーへの影響も大きい。PC部門がサムスンに譲渡された場合、部品発注量の一定割合がサムスン電子にシフトするのは確実で、液晶パネルを生産する友達光電(AUO)や奇美電子(チーメイ・イノルックス)、台湾のDRAM各社への影響は避けられない。

 HPはこれまで自社にハードウエアの生産能力がなかったため、台湾のサプライチェーンに大きく依存してきた。しかし、サムスンには液晶パネル、DRAM、発光ダイオード(LED)、光ディスクドライブ、バッテリー、ハードディスクに至る自前のサプライチェーンがあり、これまでも一定量をグループ内から調達してきた。このため、業界関係者は「HPブランドがサムスンの経営となれば、台湾メーカーから調達比率は大幅に低下する」と指摘した。

 コンパルの陳総経理は「サムスンは自前の生産能力に限りがあり、台湾メーカーの研究開発能力や生産能力に今後も頼る必要があるため、短期的に発注をシフトさせるとは思わない。ただ、長期的には動向を見守る必要がある。HPに対する依存度が高い鴻海精密工業、英業達(インベンテック)は不確定要素が増すのではないか」と指摘した。