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過労死、雇用主に刑事責任も検討


ニュース その他分野 作成日:2011年3月10日_記事番号:T00028689

過労死、雇用主に刑事責任も検討

 行政院労工委員会(労委会)の王如玄主任委員は9日、過労死が相次ぐ現状を踏まえ、違法な超過勤務に対し行政罰で科せる過料の上限を2万〜20万台湾元(約5万6,000〜56万円)に引き上げ、違法企業と責任者名を公表することを盛り込んだ労働基準法(労基法)一部改正案を今月中に行政院に提出すると表明した。現行の過料額では企業に注意を促す効果が不十分との認識だ。過労死に至った場合は、雇用主および超過勤務を指示した管理職を対象に刑事責任を追及することも検討する。10日付工商時報などが報じた。


王如玄・労委会主任委員が過労死問題に具体的な対策を示したのは今回が初めてだ(9日=中央社)

 王主委は労基法の一部改正を決めた背景として、ハイテク企業などで過労死の疑いがあるケースが多発する中、▽調査の結果、企業の2割以上が法令に違反していた▽過労死と認定された労工保険(労働保険)給付件数は2007〜10年で57件に上る▽労働団体から、超過勤務が長期にわたる企業に対する刑事責任を求める声が上がっている──などを挙げた。違法な超過勤務に対する現行の過料は6,000〜6万元だ。

 過労死者を出した企業の責任者に対する刑事罰については、導入には刑法改正や特別法制定が必要との認識で、海外の制度の情報収集を行っていると述べた。ただ一方で、行政罰は迅速に科せる一方、刑事罰は三審制のため、実際に制裁が行われるまでに時間がかかり、企業に対して十分な抑止効果を発揮しない可能性もあるとの見方も示した。

 なお、労委会関係者は、現行の労基法改正で可能で、現行法によれば、その法人の代表者と業務執行者、つまり雇用主と残業を指示した上司を罰することができると指摘した。

産業界は反対、「競争力に影響」

 刑事罰導入案に対しては、台湾企業の国際競争力に影響するとして、産業界から反対の声が上がっている。

 中華民国全国商業総会(商総)の張平沼理事長は、過労死は因果関係が不明なことも多いのに、刑事罰の対象に残業を指示した管理者を含めるならば「今後、管理職に就き、部下に業務を指示する人がいなくなる」と懸念を示した。中華民国全国工業総会(工総)の蔡練生秘書長は労委会に対し、刑事罰を科すよりも、労働時間の規制や定期的な健康管理などの措置から着手すべきと提言した。

南亜科やHTC、職場環境改善に尽力

 近年、過労死が疑われる死亡例は、▽台塑集団(台湾プラスチックグループ)のDRAM大手、南亜科技のエンジニア(29)、10年1月11日に自宅で死亡▽スマートフォン大手、宏達国際電子(HTC)のエンジニア(30)、11年2月20日に自宅で残業中に死亡▽中小型液晶パネル・タッチパネル大手、勝華科技(ウィンテック)の派遣社員、11年3月1日に夜間勤務中に死亡──などで、いずれも過労死の認定手続き中だ。

 南亜科技は職場環境の改善策として、早朝ランニングや映画鑑賞などストレス解消に役立つ行事を開催したり、部下に過度の残業を指示しないよう管理職に求めることで、仕事と家庭を両立できるワークライフバランスを支援しているという。HTCは、労働時間が決まっていない「責任制」を導入しているため、毎晩11時に従業員に対し帰宅を促しており、正常な休憩時間確保を重視していると強調した。

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