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《東日本大震災》半導体・液晶パネル、影響最大か=経済部


ニュース 電子 作成日:2011年3月14日_記事番号:T00028749

《東日本大震災》半導体・液晶パネル、影響最大か=経済部

 東北・関東地方に甚大な被害をもたらした東日本大震災の台湾電子業界への影響について、黄重球・経済部次長は13日、日本が高い世界シェアを握る川上の原料および重要部品が供給不足に陥り、2大主力産業である半導体、液晶パネルが最大のダメージを受ける可能性があるとの見方を示した。さらに影響は川中・電子部品、川下・IT(情報技術)製品業界に波及する恐れもあるとしている。14日付工商時報などが報じた。

 経済部は、比較的大きな影響が出る電子材料・部品として、▽液晶パネルモジュールの貼り合わせなどに使用される異方性導電フィルム(ACF)▽半導体シリコンウエハー▽プリント基板(PCB)メーカーで使用する圧延銅箔(はく)──を挙げた。

 ACFは、日立化成工業が世界シェアの過半を占め、友達光電(AUO)、奇美電子(チーメイ・イノルックス)を含む世界5大パネルメーカーが供給の4割以上を同社に頼っている。同社はACF生産の大部分を茨城県で行っており、今回の地震で日立地区と同県西地区で生産を停止したと報じられている。同社は「甚大な被害は発見されていないが、一部建屋および製造設備への損傷がみられる」としており、損傷状況の詳しい確認を行う方針。同社の生産停止により、液晶パネルモジュールへのドライバIC貼り付け工程に影響が及び、台湾のパネルメーカーもダメージを受けると予想される。

 シリコンウエハーも世界シェアの約50%を占める信越化学工業とSUMCO(サムコ)で、信越化工が主力の白河工場を操業停止、SUMCOは米沢工場を停止しており、今後の川下への供給に懸念が出ている。なお、信越化工の白河工場のみで世界の半導体用シリコンウエハー供給の22%を占める。

台湾メーカーに供給要請

 14日付電子時報によると、こうした状況の中、中美矽晶製品(シノアメリカン・シリコン・プロダクツ、SAS)、合晶科技(ウエハーワークス)、尚志半導体など、台湾の中小型サイズのシリコンウエハーメーカーには地震発生後より、供給を求める顧客からの電話が相次いでいるという。ただ、これらのメーカーでは、生産能力が既に満杯状態となっており、顧客の需要に応じられるかには懸念もある。

 一方で同紙は、業界関係者の話として、ファウンドリー業界は第1四半期の景気好調を受けてウエハー在庫を一定程度確保している上、サプライチェーン内の在庫も3カ月水準に達しているため、地震の影響が2カ月以上続かない限り、台湾半導体業界への影響は大きくないとの見方を伝えている。ファウンドリー最大手の台湾積体電路製造(TSMC)も、「既にサプライヤーから深刻な影響は出ていないとの連絡を受けた」ことを明らかにしている。

 圧延銅箔については、世界シェア75%を占めるJX日鉱日石金属が生産拠点とする東北・北関東地区に位置する工場の操業を停止しており、PCB業界全体への影響が懸念されるほか、ニコンやキヤノンの露光装置を生産する工場も宮城県、茨城県に所在するため、これらメーカーへの依存度の高い台湾半導体・ディスプレイ業界に影響が出る恐れがある。

ノートPC電池供給に懸念

 また、ソニーが福島県に持つノートパソコン用電池および電池セル工場が生産を停止したことで、ソニーを同部品の重要な調達先とする台湾のノートPC産業に深刻な影響が懸念されている。

 電子時報はこれについて、ソニーが今年、電池セル価格の引き上げを行ったことを受けて、顧客は調達先の切り換えを進めており、今回の生産停止による当面の影響は限られるが、電池市場全体としては供給不足による価格上昇は避けられず、ノートPCブランドおよび受託メーカーは第2四半期、コスト圧力が高まると予測している。

NANDフラッシュ、価格上昇へ

 このほか、地震による影響が大きい分野として、工商時報はNAND型フラッシュメモリーを挙げた。NANDフラッシュは世界2位の東芝で生産がストップしたことにより今後市場への供給量が減少し、華碩電脳(ASUS)も「同製品の調達が最大のダメージを受ける」としている。タブレットPCブームが起きる中、既に需給がひっ迫している同製品の値上がりは避けられない見通しだ。

 一方、DRAMはエルピーダメモリが既に生産の再開を表明しており、価格と供給量への影響は小さいとみられる。

【表】