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《東日本大震災》半導体ウエハー、5月に争奪戦も


ニュース 電子 作成日:2011年3月16日_記事番号:T00028812

《東日本大震災》半導体ウエハー、5月に争奪戦も

 東日本大震災により信越化学工業とSUMCOの半導体用シリコンウエハーの東北・関東地方の工場が操業を停止したことで、半導体用ウエハーの供給が5月に滞り、業界各社による確保競争が激しくなる可能性が浮上している。半導体生産に影響が及ぶか否かは、両社の稼働再開が鍵になるという点でアナリストと業界関係者の見方が一致している。16日付工商時報などが報じた。

 信越化学は14日、地震で稼働を停止していた群馬工場(群馬県安中市・松井田町)の操業再開を発表したが、鹿島工場(茨城県神栖市)と白河工場(福島県西郷村)については、損傷を受けた設備の点検を行っており、復旧時期は明確になっていないとしている。SUMCOは米沢工場(山形県米沢市)の稼働を停止している。

 米証券大手メリルリンチのダン・ヘイラー世界半導体産業研究部主席アナリストは15日、シリコンウエハーは日本勢が世界全体の供給の60〜70%を握っており、日本からの供給が途絶えた場合、5月には半導体業界で激しいウエハー確保競争が起きるという見方を示した。

 UBS証券の程正華・アジア太平洋地区半導体産業主席アナリストは、現在1〜2カ月のファウンドリー業界の在庫推移から見て、半導体サプライチェーンに衝撃が及ぶかどうは、日本メーカーが2カ月後に生産を回復できるかにかかっていると指摘した。

DRAM業界、供給後回しに?

 これについてDRAM業界の関係者も「4月までは安全だが、5月以降は信越化学による稼働再開の状況を見なければならない」と同様の見方を示すとともに、DRAM各社がウエハー供給で後回しにされる可能性に懸念を示した。

台湾DRAMメーカーは、他の半導体大手と比べ価格交渉力で劣るため、信越化学とSUMCOが大手への供給を優先させる恐れがあるという。しかもDRAMメーカーは現在、資金不足や新規製造プロセス用のウエハーの供給が間に合わないといった理由で、ファウンドリー各社ほど在庫量が十分ではないと指摘した。

 こうした一方、華亜科技(イノテラ・メモリーズ)の高啓全総経理は15日、同社はウエハーを九州から調達しており、日本からの他の化学品など素材の供給も1カ月以内には正常な状態を回復する見通しだとして、影響は大きくないとの見解を示した。

NANDフラッシュに最大の懸念

 なお、DRAM業界関係者は、四日市工場でNAND型フラッシュメモリーを生産する東芝は、ウエハーを信越化学から調達しており、一部化学素材の調達先のメーカーも地震で被害を受けたため、東芝が今後もこれら素材を調達を円滑にできるかどうかがNANDフラッシュのサプライチェーン動向に影響を及ぶとの見方を示した。

 メリルリンチ証券アナリストのヘイラー氏は、「NANDフラッシュはスマートフォンやタブレット型パソコンに広く使用されており、供給に問題が生じれば影響は大きい。NANDフラッシュの供給不足を最も懸念している」と発言した。

 

【表】