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《東日本大震災》在台日系企業、業務が大混乱


ニュース その他分野 作成日:2011年3月21日_記事番号:T00028897

《東日本大震災》在台日系企業、業務が大混乱

 「売り上げ減少は避けようがない」「とにかく情報が欲しい」「モノを送れない」──。東日本大震災により、多くの在台日系企業の業務に深刻な影響が出ていることがワイズリサーチの調査で分かった。製品供給の停止で打撃を受けているとの回答が目立ったほか、供給再開時の対応、今後想定される部材の緊急生産による値崩れなど、懸念は多岐にわたる。


今回の大震災は、重要素材・部品の日本への依存度の高さを浮き彫りにしている(中央社)

 「どんなに深刻な情報でもいい。現実をありのまま、すぐに教えて欲しい」。基幹工場が操業できなくなった電子材料企業の販売担当者は強い口調で語った。この販売担当者が扱っているのは、世界市場で寡占的な地位を占める高機能電子材料だ。

 しかし、類似品を生産する韓国企業がこの機会に付け入ろうと販売攻勢を掛け始めたため、危機感を強めている。「最悪、半年モノが届かなくても構わない。一時的に韓国製品を使ってもらい、その後当社に戻って来てもらうべく準備をするだけだ。しかし供給の正常化見通しが立たない現状では、それさえもできない」と嘆く。

 電子産業では10年来、在庫圧縮によってキャッシュフローを改善してきた。それが未曾有の震災ではアダとなっている。ある半導体メーカーは「本来の需要に応じ切れる在庫など今、全く持っていない」と明かす。

 在庫圧縮を可能にした情報システムがダウンした企業もある。ある業務用電子機器の販売代理店は「手書きの伝票をファクスで送るなどして、どうにか対処している」と落胆気味に話した。

食材を台湾製に切り替え

 外食産業では、福島第1原子力発電所における事故が客足の減少につながらないよう必死だ。ある大手和食レストランチェーンは、風評被害を避けるべく、日本から輸入している食材を台湾調達に切り替える計画だ。台湾製食材の品質や安全性の検証が必要なため、その作業に追われている。

物流停止に困惑

 仕入れ元や日本の工場が被害を受けなかった企業にも、震災は影響を与えた。特に物流がストップしたことによるインパクトが大きい。電子部材の専門商社は「救援物資の輸送が優先されているため、顧客の納入予定日を過ぎても製品を出荷できていない」と話す。同様の声は業務用電子機器の販売代理店からも聞かれた。また、関東における計画停電は「東京本社と電話でやりとりできる時間が半分になった」(電子部材の商社)といった副作用をもたらしている。

 混乱が続く一方、地震発生から10日を経て、資材や商材の供給が戻ってきたときにいかに対応すべきかが在台日系企業の関心事になりつつある。「どの顧客に優先的にモノを渡すのか悩む。優良顧客を優先すれば、そうでない顧客の心証を害してしまう」(電子材料商社)。

値崩れを懸念

 供給過多による価格下落も懸念材料だ。「本当に怖いのは携帯電話機など、日本企業の部材が多く使われている最終製品の需要が一時的でも減ってしまうこと。そうなれば緊急生産した際に部材があふれて値崩れが起きる。一度下がった価格は、まず元に戻らない」とある半導体メーカーは指摘した。

 大震災が在台日系企業に与える余波はまだまだ広がる見通しで、正常化に向けた戦いの終わりは見えていない。