ニュース 電子 作成日:2011年4月1日_記事番号:T00029164
宏碁(エイサー)は31日、ジャンフランコ・ランチ執行長(CEO)兼総経理が辞任し、同社を離れると発表した。企業の方向性をめぐる他の経営陣との意見対立によるもので、事実上の解任とみられる。タブレット型パソコンやスマートフォンの登場で業界が大きな変化に見舞われる中、同社は今後、出荷規模とシェア拡大を追求した「ランチ路線」から、顧客価値創造・利益重視の方針に転換を図るが、アップルの攻勢に代表される厳しい課題への具体的な対応策が注目される。1日付電子時報などが報じた。
ジャンフランコ・ランチ氏。辞任理由には創業者、施振栄氏との理念の衝突もあったとされる(同社提供)
多ブランド戦略を推進
ランチ氏は、エイサーを世界2位のパソコンブランドに押し上げた功労者だ。1955年にイタリア北部トリノに生まれ、97年にマーケティングマネージャーを務めていた米テキサス・インスツルメンツ(TI)のノートPC部門がエイサーに買収されたことで、同社のメンバーとなった。その後2002年に国際業務総本部の共同総経理の地位に就くと、わずか2年で欧州6カ国のノートPC市場でシェア1位に成長させた。
05年にCEOに抜てきされると、「Gateway」、「packard Bell」および「eMachines」と、相次いで他のPCブランドを買収し、多ブランド戦略を展開した。その結果、エイサーは昨年の一般消費者向けノートPCで2,550万台を売り上げ世界1位となり、ビジネス向けを合わせた出荷台数でも米ヒューレット・パッカード(HP)に次いで2位となった(IDC統計)。
しかし、アップルの攻勢と昨冬の欧米での暴風雪で販売が落ち込む中、ランチ氏の設定する目標が高過ぎて不適切との見方が社内で広まっていたという。そして、今年第1四半期の売上見通しが大幅な下方修正を迫られたことで辞任が決定的となった。
なおランチ氏の離職に伴い、他の欧州籍経営幹部も同社を離れるのではないかとの観測が出ているが、王振堂董事長は「マーケティング部門の7大幹部はすべて留任する」と強調した。またランチ氏とは離職前に、競業禁止協定を交わし、関連産業に転職することはできないという。
今後は王董事長がCEOを兼任して、財務、人事、マーケティングを担うが、製品の設計や開発、調達、物流などのサービスについての責任を担う総経理の人事は、4月末に発表する予定だ。同日付経済日報は、翁建仁・資訊産品全球運筹中心(IT製品グローバルオペレーションセンター)総経理が昇任する可能性が高いとの市場観測を伝えている。
「3つの下方修正迫られる」
エイサーの今後の見通しについて業界では、「今年は3つの目標で下方修正を迫られる」との厳しい見方が出ている。1つは今年500万〜700万台を目標としているタブレットPCで、先ごろ同社が発表した「アイコニア・タブ」はiPad2に比べ、軽さ、価格、性能のいずれも劣っており、「目標達成はまず無理」との予想だ。
2つ目は、今年、前年比横ばいの1,000万台維持を目標としている低価格ノートPC(ネットブック)で、タブレットPC人気に圧迫され達成は困難とみられる。また同製品によってPC市場でのシェアを伸ばしてきたエイサーにとって、ネットブックが不調となれば全体のシェアにも影響は避けられない。
3つ目はスマートフォン。今年の目標は500万台だが、業界では「不可能」との見方が大勢を占める。理由は、知名度が低いことと、携帯電話ブランドに比べ通信キャリアとの関係が弱いことだ。
こうした状況の中、外資系証券会社からは、「エイサーが現在できることは、本業のノートPCで欧州、中国市場に注力することと、タブレットPCブームが一過性のものであることを祈るだけ」との指摘も出ている。
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