ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム グループ概要 採用情報 お問い合わせ 日本人にPR

コンサルティング リサーチ セミナー 経済ニュース 労務顧問 IT 飲食店情報

国光石化、台湾での建設断念


ニュース 石油・化学 作成日:2011年4月25日_記事番号:T00029578

国光石化、台湾での建設断念

 環境問題で建設の是非が問われていた国光石化科技(KPTC)の大型石油化学プラントは、彰化県大城郷での建設が見送られることが確定した。6,100億台湾元(約1兆7,000億円)規模の大型投資の凍結により、将来的に台湾域内へのエチレン供給が50万トン規模で不足するなど、石化産業への大きな影響が予想されている。台湾中油は対策として供給能力向上のための投資を検討している。政府はナフサ分解プラントの中国投資解禁で検討時期が熟したとの認識だ。23日付工商時報が報じた。


馬英九総統の判断には、環境保護団体の圧力で台湾全体の経済的利益を犠牲にしたとの批判もあり、果たして正しかったのかどうか議論が分かれている(22日=中央社)

 馬英九総統は先週22日、国光石化に43%を出資する筆頭株主の台湾中油が、27日に予定される国光石化の株主総会で、彰化県での建設への不支持を明確に表明するよう、行政院に求めたことを明らかにした。

 馬総統は、反対運動が盛り上がりを見せる中、建設を強行した場合の経済効果と来年1月の総統・立法委員同時選挙への影響をはかりに掛けて、問題の早期収拾が得策と判断したとみられている。台湾では他に大型石化プラントの代替用地を確保することは困難で、海外での全プラント建設、台湾と海外での分割建設が今後視野に入ってくる。

供給不足50万トン

 国光石化プラントは当初、投資額9,600億元、エチレン年産能力240万トンで計画された。しかし、環境影響評価審査が難航したことにより、第2期工事計画が放棄され、投資額6,100億元、年産能力120万トンに修正されて、今年11月の着工、2015年の完工を目指していた。ただ、経済部は「今後10年の経済発展を支えることは可能」との認識だった。

 プラント建設が計画された理由の一つに、中油の第5ナフサプラント(高雄市楠梓区、通称五軽)が15年に海外へ移転した後の、台湾域内へのエチレン供給を補う目的があった。施顔祥経済部長によると、中油のエチレン供給量は現在年間108万トン。13年に予定される第3ナフサプラント(高雄市林園区、通称三軽)の設備更新によって150万トン規模への拡大が見込まれるものの、第5ナフサが移転すれば需要に対し直ちに50万トンの供給不足が生じるという。

 国光石化プラントの台湾での建設見送りが決まったため、中油は第5ナフサの海外移転が確定した場合、毎年35万トンを海外から台湾に輸送する必要が生じる。中油はこのため、高雄港洲際コンテナセンター第2期計画区で大林石化輸送・貯蔵センターを投資額600億元で建設し、台湾石化業者への供給拠点とすることを計画している。

高価値化に挑戦

 エチレンを海外から輸送、または購入となった場合、エチレン調達コストが増大するため、石化業界は5大汎用樹脂、および中間原料の生産拡大が困難となる。

 経済部はこのため、石化業界が生産する製品の高価値化のペースを速める方針だ。短期、中期、長期のスケジュール別に、ハイエンド特殊化学品の開発に注力する。短期は3〜4年のスパンで、液晶パネル用光学薄膜、液晶パネル・発光ダイオード(LED)用川上材料などが対象となる。

 こうした分野では日系企業が基幹材料を握っているため、経済部は台湾への投資誘致を働き掛けていく方針だ。日系企業の側にも、東日本大震災によってリスク分散の必要性が生じているため双方にとってプラスとなる。杜紫軍・経済部工業局長は、「われわれは(日系企業の)リストを持っている」と強調したが、個別のメーカー名は明らかにしていない。

ナフサ中国投資、解禁は来年以降か

 国光石化プラント建設は、海外が唯一の選択肢となったことから、施経済部長は22日、「ナフサプラントの中国投資解禁を検討する時期が熟した」と初めて発言した。

 ただ、中国は石化川上分野への外資単独による投資を開放しておらず、また、実行する場合、中台間の交渉が必須となるため、馬政権幹部は24日、「来年の総統選、または5月20日の就任日まで台湾側が投資開放に踏み切る可能性は非常に低い」との見方を明らかにした。