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ヘルメット姿でタロコ観光、落石対策は「笑いぐさ」


ニュース 社会 作成日:2011年5月2日_記事番号:T00029698

ヘルメット姿でタロコ観光、落石対策は「笑いぐさ」

 白いヘルメットをかぶった人たちが、大勢列をなして歩いている。といっても、ここは建設現場や工場の中ではない。台湾が世界に誇る景勝地、太魯閣峡谷(タロコ渓谷)での一コマだ。「台湾のグランドキャニオン」の異名を持つ同地には、大理石の断崖絶壁が続く絶景が広がる。


傅崐萁県長(右)は、世界でも観光客にヘルメットを着用させている観光地はほかになく、「世界の笑いぐさだ」と憤る(1日=中央社)

 しかし、太魯閣峡谷では近年落石事故が相次いでおり、中国人観光客が落石で負傷したことをきっかけに太魯閣国家公園管理処は2009年5月から九曲洞や太魯閣、天祥など峡谷内の要所にヘルメットを用意。観光客に着用を義務付けるようになった。くだんのヘルメット姿の一行は観光客で、落石用のヘルメットを着用しているというわけだ。

 ただ、対策を講じたものの昨年1月にはヘルメットを返却した後、観光バスに戻る途中の中国人観光客の頭部を落石が直撃。不幸にも帰らぬ人となってしまった。また、今年3月にはヘルメットを着用していなかった中国人観光客が、落石に遭い全治2カ月以上の大けがをしている。

 ここ1カ月も相次ぐ落石で、一部の観光ポイントは立ち入り禁止状態だ。現地を視察した地元花蓮県の傅崐萁県長は1日、「観光客にヘルメットを提供するだけでは、実質的な解決にはならない」と政府の対策を強く批判。観光客を落石から守るため、落石の多い39カ所に、透明の強化ガラスまたはガラスファイバーで覆った、鉄骨構造の廊下設置の必要があると提案している。

 しかし国家公園管理処は、鉄骨構造のような大きな設置物は、人や車の通行の妨げになり、景観にも影響を及ぼすとして難色を示し、「現在のところヘルメットが唯一の安全対策」と主張している。

 気温が急上昇している今日このごろ、汗まみれになって返還されるヘルメットも多く、放置すると異臭を放つため、管理処の職員は毎日せっせとヘルメット1万個をアルコール消毒しているそうだ。