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原発の津波対策、危うさ明白に


ニュース 公益 作成日:2011年5月9日_記事番号:T00029872

原発の津波対策、危うさ明白に

 福島第一原子力発電所の地震・津波による放射能漏れ事故を受け、すべて海の近くに設置されている台湾の原発でも総点検が実施された。8日付自由時報によると、今週、経済部に提出される報告書で台湾電力は、既存の第1〜3原発は津波対策が十分ではないことを認めた。同社は既に改善に向けた準備に取り掛かったと強調しているが、第1、第2、および建設中の第4原発は台北市に隣接する新北市に位置しており、事故が起きれば影響は甚大なものになると予想されるため、今後、脱原発化を含めた議論が高まりそうだ。

 台電は今回、▽地震対策▽津波対策▽貯水対策▽緊急発電設備──の4項目で総点検を実施。その結果、耐震能力についてはすべての原発が震度7に耐えられると分かったものの、津波の影響については、海抜12メートル以上の位置にある第4原発を除き、運転中の第1原発(新北市石門区)は津波対策のために設けられた水門の動作が遅すぎ、第2(同市万里区)、第3原発(屏東県・恒春)には水門自体が設置されていないことが明らかとなった。このため台電は、第1原発の水門は常時閉門に改め、第2、第3原発には水門を設置することとなった。

 また、貯水対策について報告書は、台湾の原発には貯水槽が設けられているが、耐震強度が十分ではないため改善が必要と指摘している。緊急発電設備については既存設備に加え、3基の原発に計14台の移動式発電機を配備する計画だ。

最悪で485万人避難も

 行政院原子能委員会(原能委)はこのほど、原発事故が発生した場合の避難対象エリアの見直しを行い、対象となる範囲が現行の「原発から半径5キロメートル」から「半径30キロ」に拡大されることとなった。半径30キロ圏内は危険度に応じて3区分する。北部に地震や津波が発生し、3基で事故が発生する最悪の事態となった場合、約485万人が避難を求められることになる。
原能委の計画では、現行では半径5キロ内のみを「緊急避難区」としているが、今後は▽第1エリア(半径10キロ内)、「緊急避難区」▽第2エリア(半径10〜20キロ内)、「緊急保護区」▽第3エリア(半径20〜30キロ内)、「緊急予備保護区」──とする。

 第1エリアは、事故が発生すれば事前に地方自治体が策定した対策計画に従って他県市に避難することになり、第3エリアも、事故の重大性や風向きによって避難が求められる。

既存原発の運転延長、「可能性低い」

 なお原発反対の世論が高まる中、施顔祥経済部長は先ごろ、間もなく使用期限を迎える第1、2原発の運転延長について「可能性は低い」との考えを示した。

 その上で「1〜2カ月内に新たなエネルギー政策のたたき台を示す」と語り、さらに2030年の時点で台湾の再生可能エネルギーの発電容量を、洋上風力発電を中心として1万858メガワット(MW)とし、台湾の発電容量全体に占める割合を現在の6%から16%まで引き上げるとの計画を示した。

【図】