ニュース 電子 作成日:2011年5月20日_記事番号:T00030140
シンガポールのEMS(電子機器受託生産サービス)大手、フレクストロニクス・インターナショナルのマイク・マクナマラCEOはこのほど、「ノートパソコン受託生産は利益が薄過ぎる」と発言し、同業務から撤退する可能性を示唆した。実際に撤退となればノートPC受託業界の勢力図書き換えは必至で、同業界におけるEMSの勢力後退を明示するものとなる。20日付電子時報が報じた。
マクナマラCEOの発言は、JPモルガン証券が16〜18日に米国で開催した「グローバルTMTカンファレンス」においてなされた。同氏は「ノートPC産業の利益率は当社が参入した当時の3%から現在1.5%まで低下しており、さらに当社はこの水準にも達していない」と述べ、来年向けの受注争いには加わらない姿勢を示唆した。
ノートPC業務からの撤退について、フレクストロニクス台湾の広報部はコメントを避けたが、業界関係者によると撤退は既定路線で、既に同社内部では今後タブレットPCやスマートフォンなどのより利益率の高い製品に注力すべく、リソースの整理に着手しているという。
EMSからODMへ発注回帰
ノートPC受託業界は、フレクストロニクスや鴻海科技集団(フォックスコン)などEMSメーカーの参入などにより、過去数年で主要メーカーが4社から7社に増加、価格競争が加熱した。さらに原料価格や中国の人件費上昇などが加わり、ほとんど利益の出ない状況となっている。
2007年に同事業へ参入したフレクストロニクスは、その後受注拡大を進め、ヒューレット・パッカード(HP)から毎月40万〜50万台の受託獲得に成功した。しかし、他の顧客開拓に進展が見られない上、HPが最近行った12年向けの見積要求(RFQ)では、EMSに発注していた分をODM(相手先ブランドによる設計・製造)に戻す傾向が見受けられ、こうした状況が、フレクストロニクスに撤退を迫っているようだ。
HPの戦略転換について電子時報は、「EMSとODMを競争させることでコスト引き下げを狙ったが、20年におよぶ設計開発能力の蓄積を持つODMに対し、品質と納期の面でEMSは追いついていないため」と分析している。
鴻海もノートPC受託事業が展望通りに進まず、ブランド各社からの受注ペースが緩和したと伝えられている。同社はこのため、低価格で受注を奪う従来の戦略を転換したもようだ。同社はフレクストロニクスの撤退観測やブランドの「ODM回帰」について「ノーコメント」としつつ、「当社はこれまでも、顧客の需要に基づいて適切なサービスとソリューションを提供してきたし、今後もこれを続けていく」と強調した。
ODMは受注争いに消極姿勢
フレクストロニクスの撤退やHPのODM重視により、広達電脳(クアンタ・コンピューター)や緯創資通(ウィストロン)に対する発注が増えるとみられる。ただ、ODMメーカーも、シェアの拡大よりも利益率の追求を優先する姿勢に転じており、今後のHPのノートPC委託先比率は、ODMの受注意欲次第と言えそうだ。実際、HPの来年向け見積要求に対し、ODM大手の仁宝電脳工業(コンパル・エレクトロニクス)は、受注にそれほど意欲的でない姿勢を伝えたとされる。
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