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南亜EG工場が停止へ、化繊業界に衝撃


ニュース 石油・化学 作成日:2011年5月30日_記事番号:T00030316

南亜EG工場が停止へ、化繊業界に衝撃

 台塑集団(台湾プラスチックグループ)の第6ナフサ分解プラント(通称六軽、雲林県麦寮郷)で、過去1年に4回の火災が相次いだことを受け、雲林県政府は27日、主にエチレングリコール(EG)を生産する南亜塑膠工業(南亜プラスチックス)海豊工場に対し6月1日からの稼働停止を命じた。世界4位のEG生産能力を持つ同社は、年産能力172万トンの台湾工場がすべてストップすることになる。30日付経済時報は、台湾市場向けEG供給は9割減少が見込まれ、川下の化繊メーカーに深刻なダメージが予想されると指摘した。


海豊EG工場の停止命令を発表した蘇治芬雲林県長。「工場の安全がなければ、石化産業もない」と従業員、近隣住民の安全を最優先する構えを示した(27日=中央社)

 南亜プラ海豊工場は、今回火災が起きた第6ナフサからからは約7キロメートル離れており、同プラントの敷地内には含まれない。しかし、両プラントは液化天然ガス(LPG)パイプラインで結ばれている上、火災の出火原因が同パイプからの気体漏れにあったため、雲林県は「安全管理が及ぶ範囲内に含まれる」として強硬な処分を下した。

 稼働再開について同県は「行政院労工委員会・中区労働検査所(労検所)など中央機関の検査で安全が確認されたならば許可する」としている。

停止長引くほど影響拡大

 南亜プラは海豊工場のほか、同県麦寮郷に2基のEGプラントを保有しているが、今回の火災でパイプラインが損傷を受けたため、台塑石化(フォルモサ・ペトロケミカル)から原料のエチレン供給を受けられず、稼働を停止している。このため、6月から海豊工場が停止すれば、同社の台湾におけるEG生産はすべてストップし、年産能力36万トンの米国工場からの供給のみとなる。これにより単月80億〜100億台湾元(約225億〜281億円)の減収となる可能性が指摘されている。

 経済日報によると、台湾におけるEG使用量は年間約100万トン。ただ、証券会社によると、ポリエステル産業のハイシーズンは3〜5月で、現在は非需要期に入りつつあり、各メーカーは既に稼働率を70%前後まで引き下げている。このため、南亜プラのEG生産停止が短期内に大きな影響を及ぼすことはないが、停止が長引けば長引くほど川下のダメージは大きくなると予想される。

 同紙は▽遠東新世紀(旧遠東紡織)▽新光合成繊維(新繊)▽台南紡織▽東和紡織▽宏洲化学工業──などのポリエステルメーカー、▽宜進実業▽聯発紡織繊維▽力麗企業▽宏益繊維工業▽集盛実業──などの加工糸メーカーが原料不足によって減産を迫られる可能性があると指摘した。

 なお処分発表を受けて南亜プラの呉嘉昭総経理は、同工場の停止は世界の産業チェーンを混乱に陥れる可能性があるとして、関連メーカーに対応する時間を与えるため、執行の延期を求める考えを示した。

台塑VCM工場にも停止命令

 雲林県政府は同時に、台プラ第6ナフサ内にある台湾塑膠工業(フォルモサ・プラスチックス、台塑)の塩化ビニルモノマー(VCM)工場(年産80万トン)の停止も命じた。こちらは、7日以内に釈明を行う機会を設け、同県の納得が得られなければ執行される。

 

【表】