立法院財政委員会は8日、政府系金融機関の持ち株会社「台湾金融控股」の設立計画について、野党議員の提案による計画凍結を求める動議を可決した。凍結動議に法的拘束力はなく、行政院は予定通り来年1月1日の台湾金控設立に向けて3行合併を推進する構えだが、9日付経済日報は、大型合併の効果は依然不透明なまま、総統選挙に向けた業績づくりを優先させる政治的思惑が計画の背景にあると指摘している。
台湾金控は、台湾銀行、台湾土地銀行、中国輸出入銀行の経営を統合し、巨大公営金融グループとして発足させるもの。8日は財政委員会で財政部による説明が行われ、李紀珠立法委員(国民党)が、「台湾の金融産業全体にいかなるプラスがあるのか。公営3行はそれぞれ政策的使命を帯びており、政府が100%の株式を保有していることは合併推進の理由とはならない」と批判。特に、「なぜ輸銀を併合するのか」と何志欽財政部長に詰問した。
何部長は1999年に当時の日本輸出入銀行が海外経済協力基金(OECF)と合併して国際協力銀行となった例を挙げて「国際的な趨勢」と説明したが、李委員は「一つの例で『趨勢』と言えるのか」と、説得力不足だと追及した。続けて発言した輸銀の労働組合代表も、「世界50カ国が公営の輸銀を設けており、これこそが世界の趨勢だ。輸銀の消滅で、中小企業に対する貿易支援に影響が出て輸出競争力の減退を招く」と述べ、合併に徹底的に反対する姿勢を表明した。
費鴻泰立法委員(国民党)らは、3行の統合を目指す財政部の計画は、行員の権益を考慮しておらず、また、貿易支援に悪影響が出ると主張。輸銀は条例に基づいて発足した銀行であるため、立法院がこの条例の廃止に同意するまで、財政部は統合を見送るべきとの凍結動議を提出し、財政委で可決された。
合併日程に変更なし
これについて謝志偉行政院スポークスマンは、「台湾金控の設立は行政権に属し、財政委員会の決議は拘束力がない。台湾金控を来年1月1日に設立する日程に変更はない」と強調。輸銀の併合で貿易に支障が出るという批判については、「台銀が関連業務を代替し、輸出入融資を大幅に拡大することになるだろう」と指摘した。また、「輸銀条例」については、「合併後の適当な時期を見て廃止を申請する」とした。
台湾金控は合併後の資産規模1,588億米ドル、世界の金融グループランキングで89位となるが、8月に設立が発表された際は、主要メディアすべてが「規模が大きいだけで、合併効果は期待できない」と批判した。9日付経済日報は今回の動きについて、「合併は結局行われることになるだろう」という見通しを報じた上で、「合併が全体的な効果を生むかどうかという専門的な観点から論じられることはない。しかし民進党にとって、台湾金控は来年の総統選挙の候補者、謝長廷氏(元行政院長)の重要な業績となるのだ」とその理由を説明した。
輸銀の労働組合が合併反対を表明していることについても、「台銀と土地銀が反対しておらず、輸銀は最も規模が小さいため、いくら反対しても民進党の政治的脅威とはならない」とし、「紆余曲折はあっても、最終的には『中華郵政』の『台湾郵政』への変更が実現したような結果になる」と予測した。
華南金株、来年5%放出
なお、台湾金控は成立後、台湾銀行が現在保有している華南金融控股の29%を放出する予定で、行政院金融監督管理委員会(金管会)では、来年はこのうちの5%を売却させる方針だ。
台湾金控は、その金融機関としての競争力よりも、持ち株を通じて政府の金融市場への政策介入を容易にする役割が注目されている。