ニュース 電子 作成日:2011年6月29日_記事番号:T00030938
液晶パネル大手、奇美電子(チーメイ・イノルックス)の段行建執行長は28日、今年約1,000億台湾元(約2,800億円)を予定していた設備投資を、一挙に2〜3割削減すると表明した。中国での第8.5世代工場の設置計画もペースダウンする。業績悪化による手元資金の減少を受けて、投資において慎重姿勢への転換を余儀なくされた。29日付工商時報などが報じた。
段行建執行長(右)は、次世代工場を相次いで設置している中国パネルメーカーについて「うまくいかないことは分かっている」と語り、世界パネル市場では今後も台湾勢と韓国勢の一騎打ちが続くとの見方を示した(28日=中央社)
合併効果、依然表れず
奇美電は昨年第3四半期から赤字が続いており、今年第1四半期までの累計損失額は415億元に上っている。さらに今期も100億元以上の赤字を計上するとの予測が証券会社から出されており、昨年3月の3社合併効果が依然業績に表れていない状況だ。
段執行長も「当初期待した合併効果とは落差がある」と認めている。当時は資金面や管理面から3社合併を決めたが、その後パネル市況が低迷し、運転資金のひっ迫を招いたと説明した。今後は資金を核心事業のレベルアップに集中させる方針で、新工場の設置についてはより慎重な姿勢で臨む考えだ。
「今後は技術競争の時代」
段執行長は「世界の液晶パネル生産能力は既に飽和状態となっており、今後業界は技術競争の時代に突入する」との見方を示し、同社も今年、110億元を投じて新竹科学工業園区(竹科)竹南基地(苗栗県竹南鎮)の低温ポリシリコン(LTPS)パネルの生産能力を2倍に増強するほか、アクティブマトリックス式有機EL(AMOLED)方式パネルの開発にも資金を投じると表明した。
奇美電は現在、中国テレビ用パネル市場で30%のシェアを誇るが、TCL集団のパネルメーカー、華星光電が今年8.5世代工場の稼動を予定するなど、地場テレビ大手がパネルの自社グループ内での調達率を高める見通した。奇美電にとっては「顧客がライバルに変わる」ことを意味し、中国投資の減速は市場での競争力低下につながる恐れもある。
分割案、「本来の目的に立ち返る」
一方、同社が計画している、中小型パネル部門とタッチパネル部門を新会社として立ち上げる会社3分割案は、大株主の鴻海科技集団(フォックスコン)と奇美集団の意見が食い違っていることから進んでいないとの観測が出ている。これについて段執行長は、「分割案が董事会に提出されたことはない」とした上で、「同案は管理を簡潔化し、奇美電が本業のTFTパネルに専念できるようするという目的に立ち返って検討する」と強調した。
なお同問題について工商時報は、「企業の分割はリソースの分配にかかわるため、合併よりもはるかに難しく、経営戦略、人事などが定まらず、内部の問題で消耗するようなことがあれば競争力低下につながる」と指摘した。
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