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米韓FTAに危機感、経済部が対策検討


ニュース その他分野 作成日:2011年7月6日_記事番号:T00031082

米韓FTAに危機感、経済部が対策検討

 早ければ来年にも発効する可能性がある米韓自由貿易協定(FTA)に、産業界が危機感を募らせている。米国は台湾にとり第3位の輸出先で、米韓FTAは今月発効した韓欧FTAよりも深刻な影響をもたらすと考えられている。経済部は輸出税還付措置の拡大など、対応策の検討に着手した。6日付経済日報が報じた。

 2007年6月に署名された米韓FTAは、発効後3年間で95%の品目で関税を撤廃し、残りの部分も10年以内にゼロ関税化を図ることで合意している。今後双方の国会での批准手続きを経て、手続きが順調に進んだ場合、来年にも発効する。ただ、韓国では「内容が不公平」として野党・民主党が米国との再交渉を求めており、米国でも海外との競争で競争力を失った労働者に対する政府支援、貿易調整支援(TAA)制度の縮小とFTA批准をリンクさせる政府方針に野党・共和党が反対している。米ウォールストリート・ジャーナルは、今夏の議会休会前にオバマ大統領が採決・承認に持ち込めるかは不透明で、この機会を逃した場合、12年には米国、韓国 ともに大統領選を控えるため、批准・発効は13年以降になる可能性を指摘している。

 一方、今年11月にハワイで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議への招待状を馬英九総統に手渡すために来台したカート・トン米APEC担当大使は5日、黄重球・経済部次長に面会した際、米国会は今年末に韓国、およびコロンビア、パナマとのFTAを批准するとの見通しを伝えた。

台韓、競合率7割に

 卓士昭・経済部国際貿易局長によると、台湾と韓国は産品の競合率が7割に達しており、米韓FTA発効となれば、紡織品、石油化学製品、機械などの分野が特に大きな影響を受ける。今年1〜5月、機械・電機製品の対米輸出額は85億6,000万米ドル、石化・ゴム製品は8億7,000万米ドルに上った。

 また、台湾の主力の電子関連製品は、世界貿易機関(WTO)の情報技術製品に関する協定(ITA)によって米国への輸出品目の約半分がゼロ関税となっているものの、家庭用製品向けの大型液晶パネルは対象に含まれておらず、米韓FTAによって韓国製パネルがゼロ関税になれば、台湾パネルメーカーは確実に打撃を受ける。

 経済日報によると、経済部は米韓FTA対策として、原料・部品の輸入関税率が平均4.3%以上となった工業製品を輸出する場合、輸出税還付措置を適用することを既に財政部に提案した。この場合、対象製品は1,200項目以上に上ることになる。

 経済部はまた、韓国と差別化した産品生産への支援、他国の市場の開拓、欧米日などとのFTA締結政策の推進などの対策も進めていく意向だ。

 ただ、財政部は経済部の輸出税還付の提案に対し、手続きコストがかかる上、影響を緩和する上で必ずしも有効な手段ではないとして、貿易相手国との間で関税引き下げに努めていくことが望ましいとの立場だ。

TPPは時期尚早

 日本で参加をめぐり議論になっている環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)について、黄・経済部次長はトン米APEC大使 に対し台湾に加入の意思があることを伝えた。しかしトン大使は「台湾はまずしっかり準備をしなければならない」と答え、具体的な協議を行うのは時期尚早との考えを示唆した。

 卓・国際貿易局長はTPPについて「加入できれば一挙に9カ国とFTAを締結できるに等しいメリットがあるが、9割の品目のゼロ関税化が求められるいわば高規格のFTAであり、台湾にとっては大きな挑戦となる」と語った。卓局長は台湾のFTA推進についても、「現段階ではまだ障害が多い」との見方だ。

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