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「ばか」「畜生」、馬氏と謝氏が選挙の争点めぐり応酬


ニュース 政治 作成日:2007年10月15日_記事番号:T00003155

「ばか」「畜生」、馬氏と謝氏が選挙の争点めぐり応酬

 
 民進党の総統選挙候補者、謝長廷氏(元行政院長、同党元主席)は12日、「国連加盟について弁論会を行おう」と国民党の候補者である馬英九氏(前台北市長、同党前主席)に対し正式に呼び掛けた。総統選挙に向けた論戦がいよいよ本格的に始まろうという情勢だが、馬氏は「ばか(笨蛋)だ。問題は経済にある」と批判。これに対し、謝氏が「人民はただ食べればよい畜生ではない。問題は政治から来る」と指摘し、陳水扁総統も「ばかだ。問題は台湾を語ろうとしないことにある」と反論した。あまりに汚いののしり合いに、呂秀蓮副総統が「社会のリーダーはもっと優雅な言葉遣いをしましょう」とたしなめる一幕もあった。

 
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「謝長廷氏が経済に関心を持たなくても、私は持つ」(中央社)

 謝氏が論戦の呼び掛けを行ったことについて、馬氏は「謝氏は明らかに陳総統が打ち出した枠組みの中に入った。妥協したのだ」という見方を示した。

 現実には可能性が薄く、喫緊の政治課題とは考えられない「台湾の名称による国連加盟」および「同テーマによる住民投票の、総統選との同時実施」を陳総統が強く打ち出すのは、▽有権者の台湾アイデンティティーを喚起して、来年の立法委員選挙・総統選挙の情勢を有利にする▽中国による併合を望まない台湾の民意を国際社会にアピールする▽自身への求心力を維持し、レームダック化を防ぐ──などの意図があるとみられている。しかし、台湾独立論に傾いた主張で中台関係の緊張を招く懸念があるため、「和解共生」のスローガンを掲げ、野党の明確な支持者以外の中間層を取り込む意思を見せていた謝氏は、これまであまり国連加盟問題で積極的な発言をしてこなかった。謝氏自身は台湾独立への強い信念を持っているが、馬氏の「妥協した」という発言は、選挙に向けて民進党内で摩擦を生じさせないことを優先させ、表向きの主張のスタンスを「和解共生」から「独立」寄りへと変化させたという読みだ。

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「政治こそが重要なのだ」(中央社)

謝氏、「尊厳が必要」
 
 馬氏は、謝氏の論戦呼び掛けに「失望した」とも表明。「謝氏の目には、民生経済、失業率の高低、財政の悪化など何ら重要と映っていないようだ。ただ『台湾国』が重要なのだ」と批判して謝氏をばか扱いすると共に、「どこのばかが経済をこうも悪化させてしまったのか」と陳総統も合わせて批判した。

 これに対し謝氏は、「我々はブタや犬などただ食べられればよい存在ではなく、尊厳が必要で、馬氏には経済よりも政治が重要だということが分からない」と反論。「台湾の競争力は多くの項目が世界10位以内に入っているが、政治効率は23位、政治リスクは50位と、問題は政治から来る」と訴えた。さらに、馬氏が中国人観光客の大幅開放を公約していることについて、「最大の誤りは国家安全の観念がないことだ。これこそが馬氏の経済公約の破綻だ」と論難し、「中国人観光客が1日1万人も来たら社会や治安の負担はどうするのか」と問い掛けた。

 なお、謝氏は「『両岸共同市場』を除けば、その他の中台間の経済政策で、自分と馬氏の間で違いはほとんどない」と付け足している。

 謝氏と同列で馬氏にばか呼ばわりされた陳総統は、「台湾の将来と国家の位置付けは、絶対に経済よりも重要だ」と主張し、馬氏に「お前こそばかだ」と言い返した。

馬氏、「ロングステイ」が奏効?
 
 政治誌「新新聞」の最新1075号によると、馬氏は7月から全土各地に長期滞在して末端の有権者とふれ合ってきた「ロングステイ」によって、支持率が上向きになっているようだ。

 国民党が行った支持率調査によると、元来リードしていた台中・彰化・南投地区では謝氏に対するリードが4.5ポイントから8.5ポイントに拡大。民進党の支持基盤でリードされていた南部でもわずかながら逆転したという。

 馬氏はこれまで法務部長や台北市長などキャリアが台北に偏っており、中南部に基盤は全くなかった。ロングステイはこの欠点を補う目的で行っているものだが、地方で農民や漁民の生活を体験して庶民の悩みや苦労を聞いたり、企業や有力者を訪ねてディベートを行ったりしているうちに、有権者が馬氏の温和で謙虚、努力家で、親しみやすい性格に親近感を持つようになったと国民党では説明している。

 馬氏は先月の中秋節には2万通を超える感謝状をロングステイで出会った有権者たちに発送しており、こうした行動が独立派から「統一派の中国人」扱いされている馬氏のイメージをどこまで変え、実際の投票行動への影響があるのかどうか興味深い。ロングステイは来月、最後となる台北・基隆地区まで続けられる。 
  
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