ニュース 電子 作成日:2011年8月22日_記事番号:T00032051
パソコン世界最大手、ヒューレット・パッカード(HP)が先週、PC事業の分離を検討すると発表し、台湾の受託生産業界に衝撃が走っている。HPは昨年台湾業界からの調達額が最多の250億米ドルで、PC事業の売却先によっては受注の大量流失が起き、台湾の輸出競争力、ひいては経済成長率に悪影響を及ぼす恐れすらある。22日付経済日報などが報じた。
業界関係者によると、HPのPC事業部門の価格は少なくとも250億〜300億米ドルで、高額なためデスクトップPCとノートPCを含むコンシューマ製品部分のみを売却するという観測が出ている。この場合、価格は120億〜150億米ドルが見込まれる。ビジネス用製品はコンシューマ製品よりも利益率が高く、同社とデル、レノボの3社で市場の5割以上のシェアを占め、コンシューマ製品ほど競争が激しくない。また、ビジネス用製品を残した場合、サーバーやクラウド・コンピューティング事業を発展させる上で補完効果が期待できる。
売却価格が250億〜300億米ドルであれば、買い手は資金的余裕のあるサムスン電子以外ないとみられる。ただ、コンシューマ部門だけの売却となれば、中国の聯想集団(レノボ)、華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)も候補になるとされる。資訊工業策進会(資策会)産業情報研究所では、サムスンまたはレノボの可能性が最も高いとみている。
鴻海・インベンテックに衝撃
業界関係者は、レノボやファーウェイが買収すれば、台湾受託生産業界にとって影響はそれほど大きくないが、サムスンの場合はサプライチェーンの洗い直しによって鴻海科技集団(フォックスコン)、英業達(インベンテック)などが衝撃を受けるとの見方だ。
HPの昨年のノートPC出荷台数は4,600万台で、すべて台湾メーカーが生産した。鴻海はHPをノートPC受託生産事業の主要顧客としており、同社のデスクトップPCも集中的に請け負っている。また、インベンテックはHPのタブレットPCを生産している。受託生産メーカーでは、このほか、広達電脳(クアンタ・コンピューター)、仁宝電脳工業(コンパル・エレクトロニクス)、緯創資通(ウィストロン)も影響を受ける見通しだ。
なお、宏碁(エイサー)の王振堂董事長は、「サムスンが買収したとしても100%自社で生産できるわけがない。台湾の製造枠組みはブランド業者にとって非常に良いリソースで、他社に売却しようが産業全体にとっては大きな変化はないはずだ」と指摘した。エイサー自身が買収するかについては、「自社の問題解決に忙しい」と否定した。
液晶パネル・DRAM、さらなる悪影響
また、HPは友達光電(AUO)、奇美電子(チーメイ・イノルックス)の液晶パネル大手、南亜科技などDRAMメーカーからも長期にわたって調達を行ってきたが、サムスンが買収する場合は、削減に遭う可能性が高く、業績不振にあえぐこれら各社にとってさらなる打撃となりそうだ。
一方、聯詠科技(ノバテック・マイクロエレクトロニクス)や立錡科技(リッチテック・テクノロジー)、安恩科技(IML)など、サムスンの既存サプライヤーは恩恵を受ける可能性がある。
台湾投資計画、成り行きを注視
HPは昨年、36億台湾元(約95億円)を投じて台湾の研究開発(R&D)センターの人員規模を、現在の1,000人から3年以内に2倍にするとともに、台湾を「コンピューティング・ハブ」と位置づけて末端製品のオペレーションセンターにする計画を打ち出していた。経済部は今後こうした計画に変化が生じるのか注視する構えだ。
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