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アップルCEO辞任、鴻海「懸念ない」


ニュース 電子 作成日:2011年8月26日_記事番号:T00032171

アップルCEO辞任、鴻海「懸念ない」

 アップルの共同創業者、スティーブ・ジョブズ氏が最高経営責任者(CEO)を辞任するとの発表を受けて25日、同社のスマートフォン「iPhone」やタブレット型パソコン「iPad」を受託生産する鴻海精密工業をはじめ、関連メーカーは軒並み株価の下落に見舞われた。しかし鴻海は「後任のティム・クック氏は優れた経営能力を備え、アップルは今後も好成績を続ける」と懸念はないと強調した。一方、アップルはイノベーションの源を失うため、台湾ブランドにとっては「チャンス」との見方も出ている。26日付経済日報などが報じた。

辞任のタイミング、「賢明な判断」

 ジョブズCEO辞任の一報を受けて鴻海広報部は、▽ジョブズ氏の健康回復を願う▽後任のクック氏は長らくCEO代理を務め、同社業績を向上させており、その経営能力に不安はない▽鴻海はこれまでも頻繁にクック氏と接触しており、双方の関係はさらに緊密化する──とのコメント3点を発表した。

 またCDMA仕様のiPhoneを受託生産する和碩聯合科技(ペガトロン)も「両社の関係は不変」と強調、タッチパネルを供給する宸鴻集団(TPKホールディング)の劉詩亮財務長も「アップルの研究開発(R&D)部門は既に2〜3世代先の製品を準備しており、サプライヤーもほぼ確定しているため、簡単に変わるものではない」と当面サプライチェーンに影響が出ることはないと指摘した。

 なお、同日付蘋果日報は、この時機にアップルCEOが交代することについて「同社はすべての主要製品で勝ち組になっている上、経済環境が混乱している現在を選んで引き継ぎを行えば、株価への影響は小さい」とのサプライヤーの見方を伝えた。またこのサプライヤーは、「今後1〜2カ月の間に予想される新製品発表において、健康状態に懸念のあるジョブズ氏が出席するかしないかに焦点が注がれることがなくなる」として「賢明なタイミングだ」と評価した。 

2〜3年でイノベーション力低下も

 一方で、市場分析に定評のあるノートPC受託生産大手、仁宝電脳工業(コンパル・エレクトロニクス)の陳瑞聡総経理は、「ジョブズ氏の辞任が短期内に台湾の関連産業に及ぼす影響は大きくない」としたものの、「ジョブズ氏はアップルのアイデアの源であり、今後2〜3年で同社のイノベーション力、設計力は徐々に低下していく」との予測を示した。そうなれば台湾ブランドにもチャンスが生まれるとの見方だ。

 また同日付電子時報も、「ジョブズ氏のブランドイメージを引き上げる能力は業界で追随を許さなかった」とマーケティング面についての存在意義を指摘。後任のクック氏について、製造方面の手腕に不安はないとしたものの、そのカリスマ性、プレゼンテーションの魅力はジョブズ氏に遠く及ばないとマイナス面を挙げた。

 実際、スマートフォンでアップルのライバルと目されるHTCは同日、大きく株価を伸ばした。

「第2のソニーにはならない」

 ただ電子時報は、先ごろアップルが廉価版iPhoneを、米3大キャリアすべてから発売すると報じられたことについて、「これまでのアップルにはなかった動き」と指摘。同社の新しい経営陣が、ジョブズ氏の唯一無二の企業であろうとする姿勢だけを受け継ぎ、具体的な方策については独自の判断を行う姿勢がうかがえるとして、「創業者の引退後、画期的なイノベーション力を失ったソニーの二の舞にはならない」との見方を示した。

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