「私は騙されていないわ！」劉淑貞さん（37）は、自分が結婚詐欺の被害者だと決して信じようとしなかった。なにせ、彼女は米国フロリダ大学で物理学博士（ドクター）の学位を取得し、ファウンドリー世界最大手の台湾積体電路製造（ＴＳＭＣ）で主任エンジニアを務めた高学歴のキャリアウーマンなのだ。

　劉さんによると、彼女のフィアンセは「米ＣＩＡ局長」のデビッドさん。２人は４カ月前、インターネットを通じて知り合い、スカイプのビデオ通話で交際を続けていたという。デビッドさんからは大量のＣＩＡ関係の資料を見せられており、それらはすべて信用できるものだと劉さんは語る。

　デビッドさんは2012年の次期大統領選へ出馬する予定とのことで、「私がオバマに勝てば、君は大統領夫人だよ」と劉さんに求婚。彼女は、フィアンセが３億台湾元の結納金を持って軍用機で台湾まで迎えに来ると信じ込んでしまった。

　結婚詐欺発覚のきっかけとなったのは、彼女に送られてきた婚約指輪と額面500ユーロの旅行小切手（トラベラーズチェック）37枚だった。劉さんは、デビッドさんの指示通り銀行で旅行小切手を換金しようとしたところ、偽造物だったことが分かり、警察に逮捕されてしまった。

　警察が調べたところ、劉さんは７月１日から８月19日までに、８回にわたり約４万9,600米ドルを英国、ナイジェリア、スペインへ送金していたことが分かった。

　劉さんは警察がどんなに忠告し、説得しても聞く耳を持たず、フェイスブックで「デビッドが台湾に早く来れるよう支援してほしい」と、100元募金を呼びかける始末。家族によると、劉さんは米国から帰国後、精神状態がおかしく、最近では自宅を売却し現金化しようとしていたらしい。

　将来のファースト・レディを夢見る劉さんは、８月末に高給のＴＳＭＣを離職した。まさに愛は盲目で、高学歴者も例外ではない。