ニュース 電子 作成日:2011年10月19日_記事番号:T00033229
米アップルなどにパソコン筐体(きょうたい)を供給する可成科技(キャッチャー・テクノロジー)の中国・蘇州工場が、環境問題を理由に地元当局から一時操業停止命令を受けた問題は、人民元レートへの批判を強める米国に対するけん制が目的との見方が外資系証券会社によって示された。事実とすれば、台湾メーカーが米中摩擦のスケープゴートになったと言える。19日付工商時報などが報じた。
故スティーブ・ジョブズ前アップルCEO(最高経営責任者)を悼み販売店に集まったファンたち。台湾は製造・消費の両面でアップルと深いつながりがある(中央社)
米国上院は先週、中国に人民元の切り上げを促す制裁法案を可決している。UBS証券の謝宗文チーフアナリストは、異臭騒ぎで操業停止命令を下されたキャッチャー蘇州工場のケースは、こうした背景から、環境問題から政治問題へと次元が変化したととらえるべきとの見方を示唆した。
別の欧州系アナリストも、「中国の政府系メディアが『キャッチャー事件』を連日大きく報道しているのは、絶対に単純な事情ではないことは政治的センスのある者であれば誰でも分かる」と指摘。2010年に従業員に2けたの連続自殺者が出たことで労働搾取工場とたたかれ、賃上げと内陸部移転で騒ぎを収めた鴻海科技集団(フォックスコン)のケースを想起せずにいられないと語った。
UBSの謝チーフアナリストは、海外の投資機関が現在最も懸念しているのは、キャッチャー以外の他のアップルのサプライチェーン企業にも騒動が拡大することだと指摘した。アップルのサプライチェーンは中国での生産比率が非常に高く、当面他の地域での代替は不可能なため、今回の新たな中国リスクはこれらのアップル関連企業にとって大きな課題になるという。
中国NGO、11月訪米で直談判
なお、アップルの中国サプライチェーンは、以前から環境および労働問題で批判を浴びていた。今年8月、台湾系21社を含む計27社が、北京の環境NGO「公衆環境研究中心」によって、環境汚染と労働搾取に手を染めているとしてやり玉に上げられている。
同NGOの馬軍主任は、コカ・コーラやノキアなど欧米29社に対してサプライチェーンの環境保護評価を実施するよう求めたが、アップルだけが拒否したと指摘。しかもアップルは、スマートフォン「iPhone4」の販売価格が1台600米ドルの一方、組立委託先である鴻海の中国工場は1台当たり6.54米ドルしか報酬を受け取っておらず、中国の環境と労働者が代償を支払っていると訴えた。
同センターなど環境保護5団体が公表した環境汚染企業は、鴻海のほか、華碩電脳(ASUS)、仁宝電脳工業(コンパル・エレクトロニクス)、欣興電子(ユニマイクロン)など台湾大手メーカーの関係企業が多い。環境団体は11月訪米し、アップルに直談判する予定だという。
投資保護協定が未締結、関与は困難
台湾は中台間の投資保護協定に当たる「両岸投資保障協議」の締結に力を注いでいるが、同協定の交渉を担当する凌家裕・経済部投資業務処長は、締結前の現在、中国政府が環境保護を理由に台湾企業の工場に操業停止を求めれば、台湾政府は手出しができないと語った。
経済部工業局では、キャッチャー蘇州工場操業停止のケースから、中国の投資環境悪化がうかがえるとして、台湾企業に対し台湾へのUターン投資拡大を呼び掛けた。
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