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AUO・奇美電統合、課題は山積


ニュース 電子 作成日:2011年11月23日_記事番号:T00033935

AUO・奇美電統合、課題は山積

 液晶パネル業界の深刻な低迷が続く中、行政院経済建設委員会(経建会)の劉憶如主任委員は22日、台湾大手の統合による競争力強化について、友達光電(AUO)の李焜耀董事長と奇美電子(チーメイ・イノルックス)の廖錦祥董事長に意見を打診し、両者より提携または統合について検討可能との前向きな反応を得た。しかし、虚弱な財務体質、顧客の重複、サプライチェーンの調整の必要性など課題は山積みで、十分な統合効果を得られるかは疑問視されており、政府と業界がどのような知恵を出すのか注目される。23日付工商時報などが報じた。

 李AUO董事長は劉主委との会談後、「私は業界統合に一貫してオープンな姿勢だ」と発言し、政府による調整に期待感を示した。また、台湾液晶パネル業界は工場従業員だけで6万〜7万人、川上から川上までの産業人口は20万〜30万人に上るとして、「もはや業界を救うかどうか議論している時期ではない」と強調した。

奇美電の3社合併は失敗例

 台湾液晶パネル業界では、AUOが誕生した2001年の聯友光電と達碁科技の合併、06年のAUOによる広輝電子の吸収合併、10年の奇美電、群創光電、統宝光電の3社合併と、過去に3回の大きな企業合併があった。前2者のケースは一方が主導的立場に立ち、比較的小規模な企業が対象だったため、スムーズに進行した。しかし、奇美電を中心とした3社合併は、企業規模の大きさから難度が高く、業界景気が低迷期に入ったこともあっていまだに合併効果が表れず、かえって赤字が増えた結果となっている。

 AUOと奇美電が合併する場合、同様の問題に突き当たるとみられる。どちらが主導し、どのように行うのかがまず最初の難問だ。AUOは2,183億台湾元(約5,540億円)、奇美電は3,443億元の負債を抱えており、財務体質はさらに悪化する恐れがある。このため、合併は決して最良のモデルとは言えない。

 また、台湾大手は川上から川下まで高度な垂直統合を遂げた韓国企業と異なり、ほぼ受託生産のみだ。重複する顧客は多く、合併、提携のいずれを選んでも市場拡大の効果は薄い。さらに、AUOと奇美電は過去10年にわたってそれぞれ垂直統合を進めているため、サプライチェーンの調整、取捨選択が、双方のグループの利害と絡んで最も困難な課題になりそうだ。

 なお、業界からは政府主導で合併が実現する可能性は低く、互いの強みを生かした経営統合であれば両社とも協力できるとの見方が出ている。

「日本を参考に」

 AUOと奇美電の統合問題について、ディスプレイサーチの謝勤益副総裁は、政府出資の産業革新機構(INCJ)がソニー、東芝、日立製作所の中小型ディスプレイ事業の統合を主導した「ジャパンディスプレイ」の例が参考になると指摘した。

 日本の3社が小規模であるのに対し、AUO、奇美電とも規模が大きく、鴻海科技集団、奇美集団、明基友達集団と企業文化の異なる3つのグループが背後にあるため、交渉妥結は容易ではないとした。その上で、合併が困難であれば、政府が資金を出し、企業が人材や技術を提供する形で技術開発ファンドを設けて開発に取り組み、新技術は各企業で共有して台湾の競争力を維持することが望ましく、こうした形態であれば韓国に対抗できると語った。

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