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和艦事件、UMC前董事長に無罪判決


ニュース 電子 作成日:2007年10月29日_記事番号:T00003425

和艦事件、UMC前董事長に無罪判決

 
 「政府の対中投資制限政策の矛盾こそが最大の敗者」。聯華電子(UMC)の曹興誠董事長(当時)らが、中国での事業拡大を目的に政府の規制を破って蘇州に半導体メーカーの和艦科技を設立し、出資や受注の横流しなどで協力してきたとして背任や商業会計法違反の罪に問われた裁判で、一審無罪の判決が下された。裁判ではUMCが違法行為を犯したかどうかよりも、対中投資を制限する政策の妥当性がより注目されたが、無罪判決が下されたことで「対中投資制限は非合理的」という主張がこれまで以上に説得力を持ち、来年の総統選挙に向けて民進党政権にとって一定の打撃となる可能性がある。
 
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 和艦科技は2001年の設立で、董事長兼総経理に元UMC社員の徐建華氏が就任。03年に工場を竣工し、04年に単月のウエハー生産枚数1万6,000枚と損益均衡の達成を宣言し、半導体業界の注目を浴びた。

 起訴状によると、和艦は曹興誠氏と宣明智UMC副董事長(当時)らが、董事会の同意を経ずに子会社の宏創投資公司を通じて設立し、UMCの技術を移転、受注を回して事業の拡大に協力していた。検察は、「UMCの資金が和艦に移転された明確な証拠は発見できなかったが、UMCが資金集めや工場の建設に協力していた事実は明白」とし、曹氏に懲役2年を求刑していた。 

 しかし、新竹地方法院合議法廷は26日、検察が行った捜査では犯行を十分解明できておらず証拠として採用できないとして、曹興誠氏、宣明智氏、および宏創投資の鄭敦謙総経理の3被告に無罪判決を下した。

「政治勢力が介入」
 
 判決について曹氏は「非常にうれしい」とコメント。裁判については、「UMCではなく、制度の問題だ。背後に政治勢力の介入があった」と語り、対中投資にブレーキをかけたい陳水扁政権の思惑から事件に発展したという見解を示した。また、「経済部投資審議委員会(投審会)が職権を乱用し、中華徴信所(信用調査会社)にUMCが違法だとする文書偽造をそそのかした」として、法的責任を追及する構えも見せた。

 和艦科技の今後をめぐっては、「単なる大株主の意見」としながらも、「UMCによる合併を希望する」と語った。

 曹氏は06年1月に起訴・求刑される直前に名誉董事長に、宣明智氏も名誉副董事長に退き経営の第一線から離れていた。曹氏は「UMCが受けた傷は深く、私がいなかったら会社は倒れていただろう」とも語っている。

 今回の判決について中国時報は29日の社説で、「対中鎖国政策」を痛烈に批判した。

 同紙によると、民進党政権は企業の発展に協力し株主の権利を守る本来の役割を果たさないばかりか、企業に対抗して発展を阻害している。

 半導体などハイテク産業に対する対中投資制限は、中国への技術移転による台湾の競争力の相対的低下への懸念のためだが、「発展し需要のある市場に行かないとかえって企業競争力が落ちる」と一蹴している。

 「西進(中国進出)は止まらない。なぜならば市場がすべてを決定するからだ。中国の発展に対し鎖国的な態度を取るのは全世界で台湾だけで、和艦事件は台湾政府の荒唐無稽さを際立たせた」と同紙は論評し、台湾の発展を阻害する政府を選挙で拒否しようと呼び掛けた。

民進党のジレンマを象徴
 
 ハイテク産業界は、今回の判決を歓迎している。工業技術研究院出身の業界のある専門家は、「台湾企業が行かなければ、中国企業に市場を取られるだけ」と指摘し、対中投資の抑制策にメリットはないと批判した。

 李登輝前総統が96年に「戒急用忍」(急がず我慢する、の対中投資方針)を打ち出して以来、対中投資・進出は「制限」が一貫して政策の基本線にあり、現在も上場・公開企業の対中投資額は純資産の40%までと規制されている。

 現実には多くの企業がタックスヘイブンのダミー会社を通じて投資を行うなど、さまざまな手段で規制をかいくぐって中国に投資をしているが、半導体や石油化学など大規模な投資が必要な企業にとって規制は不利で、台湾積体電路製造(TSMC)が和艦を先行させたUMCよりも出遅れてしまったように、法令を順守する企業は中国市場での競争に乗り遅れてしまう「不公平さ」を味わうケースが多い。こうした中、「対中投資制限は、台湾企業の競争力を落とすだけではないのか」という主張はより説得力を増している。

 今回の判決は、対中経済政策のあり方と根底にある台湾独立論との折り合いがいまだにつかない、民進党政権のジレンマを浮き彫りにした象徴的なものといえる。