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大企業トップ、馬英九氏支持一辺倒


ニュース 政治 作成日:2012年1月4日_記事番号:T00034690

大企業トップ、馬英九氏支持一辺倒

 長栄集団(エバーグリーン・グループ)の張栄発総裁は3日、「『1992年の共通認識(92共識)』は両岸(中台)対話の基礎で、これがなければ台湾経済は悲惨なことになる」と馬英九総統の主張に同調する発言を行い、10日後に迫った総統選での馬氏支持を明確にした。今回の総統選では、鴻海科技集団(フォックスコン)、台塑集団(台湾プラスチックグループ)、裕隆企業集団、遠東企業集団(ファーイースタン・グループ)など、台湾を代表する大企業グループのトップが相次いで馬氏支持を表明しており、現在の安定した中台関係こそが企業経営にとって重要との認識が浮き彫りになっている。


張総裁はかつては李登輝元総統、陳水扁前総統を支持した。陳政権初期に総統府資政を務めたが、中台関係を改善できないことに失望して辞めた経緯がある(中央社)

 「92共識」は92年に行われた中台対話で、「一つの中国、それぞれの解釈」の認識を共有することで双方が合意したとする国民党の主張で、馬政権はこの立場に基づいて過過去3年半の中台関係改善を進めてきた。一方、当時の総統、李登輝総統や、陳水扁前総統は「合意はなかった」と主張しており、野党・民進党の総統選候補、蔡英文氏も同じ立場だ。

 張総裁は「欧米が経済に問題を抱え、中東では戦争の危機すらある中、台湾が安定しているのは両岸に共通認識があるためだ。台湾の経済が悪いとき、大陸(中国)人が台湾に来て物を買ったり旅行したり、野菜や果物を買ってくれるのはすべて92共識のおかげだ」と、同共識を高く評価。中国が欧米と日本から重視される経済大国となった今、台湾は中国市場を捨てては生存が困難になるとの見方を示した。

 張総裁はまた、2カ月ほど前に蔡氏から受けた訪問の申し出を断ったことを明らかにした上で、蔡氏が「92共識」の代わりとして提唱する「台湾共識」について、台湾独立を主張するもので賛同できないと語った。

親日企業家も声援

 今回の総統選で、トップが馬氏支持を表明した大企業・グループは▽鴻海集団▽台プラグループ▽裕隆集団▽遠東集団▽裕隆集団▽東元電機集団▽潤泰集団(RUENTEX)▽長栄集団▽華新麗華集団▽台達電子工業(デルタ・エレクトロニクス)▽味全食品工業──と数多い。

 親日家として知られる東元集団の黄茂雄総裁は最近、馬氏支持のテレビコマーシャルで、日台投資協定など馬政権による日台関係拡大を評価する発言をした。親日企業家からも評価を受ける、というのは目を引くメッセージだ。

 これら企業家が馬氏、または直接名指ししない場合は「92共識」への支持を表明する背景には、馬政権が進めた▽中台直航▽中国人観光客による台湾観光開放▽中国企業による台湾投資開放▽台湾企業に対する中国投資の規制緩和▽金融交流の促進──などにより中台の経済関係が緊密化した現状の下、中台関係が悪化した場合、企業経営、ひいては台湾経済に深刻な影響を及ぼすとの危機感があるためだ。このため「92共識」が事実がどうかよりも、中台間の安定的な枠組みとして重視する立場を取っているとみられる。

 国民党寄りの中国時報は3日付で、「小さな店の小さな商いも、大企業の事業の青写真も、将来の見通しを立てられることが安定的発展の基本条件だ」として、企業家たちは選挙情勢が膠着する中、事業のために声を上げざるを得なくなっていると指摘した。

蔡氏「馬氏支持者は金持ち」

 こうした中、蔡英文氏は先月「馬氏のそばにいるのはみんなお金持ちで、わたしのそばにいるのは台湾人だ」と発言している。

 これに対し、同じく国民党寄りの聯合報は3日付社説で「族群(エスニックグループ)と階級対立を煽る最悪の手法」と酷評し、「蔡氏は金持ちの家の娘の台湾人だ。何で台湾人と金持ちが対立概念になるのか」と矛盾を突いた。