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奇美電、債務問題で政府に支援要請


ニュース 電子 作成日:2012年1月11日_記事番号:T00034831

奇美電、債務問題で政府に支援要請

 業績不振により協調融資(シンジケートローン)の借入金返済が困難となった液晶パネル大手、奇美電子(チーメイ・イノルックス)が昨年末、経済部工業局に対し、債務繰り延べへの支援を要請していたことが明らかとなった。工業局はこれに応じることを決め、債権銀行団が18日に対応を協議する。11日付聯合報などが報じた。

 観測によると奇美電は昨年末、15億米ドルに上る協調融資の償還期限を迎えたため、台湾銀行を幹事行として400億〜600億台湾元(約1,000億〜1,500億円)の新たな協調融資契約を結び、同資金によって借入金を返済する借り換えによって乗り切ることを試みた。しかし、銀行団との交渉は成立しなかった。

 銀行関係者によると、液晶パネル大手が過去数年間で大幅な赤字を計上していること、パネル業界への融資規模が既に大きく膨らんでいること、さらにDRAM大手の茂徳科技(プロモス・テクノロジーズ)や力晶科技(パワーチップ・テクノロジー)など、電子業界で債務問題が相次いで伝えられていることが銀行各行の融資意欲に影響したとみられる。

新たな担保提供できず

 また奇美電の2大株主である奇美実業と鴻海科技集団(フォックスコン)の間で意見が合わず、新たな担保を提出できなかったことも銀行団を説得できなかった要因で、結局、経済部に支援を要請することになったようだ。

 奇美電は「新たな協調融資について現在も銀行団と交渉を続けている」と説明したものの、杜紫軍・経済部工業局長は10日、「奇美電から正式に支援要請を受けた。このため銀行団に同社の債務を半年〜1年繰り延べるよう提案した」と認めた。

 これを受けて台湾銀行は、18日に債権銀行団による全体会議を開いて、奇美電の問題について協議することを決めた。現在奇美電が繰り延べを申請している債務残高は2,400億元で、うち今年償還期限を迎えるのは690億元とされる。

サプライヤーへの影響懸念

 杜工業局長は政府が奇美電の財務問題解決を支援する理由として、▽広い範囲のサプライヤーに影響が及ぶ▽業界の優秀な人材が中国へ流出する恐れがある▽台湾のパネルメーカーが欠ければ、業界が韓国メーカーの独占状態となり、世界のIT産業にとって好ましくない──の3点を挙げた。

 杜工業局長はまた、「奇美電は『救済』を申請したのではない」と強調、「同社の経営に問題はなく、毎月の収入は支出を上回っており、一気に返済を行えば当面の運転資金に影響が出るため支援を要請した」と説明した。

 なお、奇美電が10日に発表した昨年12月の連結売上高は468億5,400万元(前月比8%増)、大型パネル出荷量は1,299万6,000枚(前月比7%増)でともに昨年の単月最高を記録した。中小型パネル出荷量は3,502万1,000枚で前月比5.3%減となった。

 また昨年第4四半期の売上高は前期比4.6%増の1,304億1,000万元、通年では前年比4.4%増の5,011億3,500万元となった。

【図】