ニュース 政治 作成日:2012年1月15日_記事番号:T00034896
馬英九氏(国民党・現職)が蔡英文氏(民進党)を下して再選を果たしたことに対し、国民党寄りの聯合報、中国時報は、馬氏が「1992年の共識(92共識)」を対中関係の基礎とすることに、有権者の「お墨付き」が得られたと論じた。一方、民進党寄りの自由時報は、馬氏の得票が2008年の前回総統選より約76万票減ったことに対し、貧富の差の拡大、および台湾の国家主権が損なわれていることに対する警告だと指摘した。
聯合報は、蔡氏が選挙期間中、「92共識は民主的な手続きを経ていない」と無効を主張し、さらに経済問題について「経営者対労働者」の対立を煽ったが、長栄集団(エバーグリーン・グループ)の張栄発総裁、鴻海科技集団(フォックスコン)の郭台銘董事長、宏達国際電子(HTC)の王雪紅董事長ら大手企業のトップが相次いで92共識への支持を表明、労使は運命共同体であるとの意識が強かったことから、「92共識の勝利」につながったと分析した。
また同紙は、李登輝元総統が投票日前日に蔡氏の支援集会でステージに立ち、同候補を抱き寄せて激励したことに対し、「多くの有権者に、台湾独立の懐に戻ったとの印象を抱かせ、致命的な抱擁となった」と評した。
中国時報も、民進党が当初、経済格差拡大に対する批判を打ち出していた際は戦略が功を奏していたが、焦点が92共識に移ってからは、蔡氏が共識否定を強めたことが、中台交流政策に恩恵を受ける多くの有権者に懸念を抱かせたと指摘した。その上で、「今回の選挙によって92共識を両岸(中台)の平和的交渉の基礎をすることを有権者が認めた」と分析し、「今後、与野党が議論の争点とする必要がなくなった」とした。
「中国が真の勝利者」
一方、自由時報は、依然半数近くの台湾住民が馬氏が推進する政策の方向性に疑念を抱いていると警告。その原因として、経済政策で、中国や大企業を重視する姿勢が強すぎ、就業状況が悪化し、一般労働者が経済的な恩恵を受けられず、格差が拡大していることを挙げた。
また、92共識について馬氏が「一つの中国、それぞれの解釈」を主張することによって、国際社会において台湾が「中国の一部」と矮小(わいしょう)化される場面が増えているとして、「92共識は半数近くが認めておらず、今回の結果で承認を得られたことにはならない」と指摘した。
また、中国が台湾人企業家が投票のために帰台することを支援するなど国民党に対するバックアップを行っており「今回の選挙の真の勝利者は中国だ」と論じた。
「有権者は安定に一票」
このほか経済紙の経済日報は、「有権者が現在の状況を評価し、安定に一票を投じることを選択した」との見方を示した。ただ、馬氏が当選確定後の記者会見で「腐敗の拒絶、開放・規制緩和、経済振興、両岸平和推進への努力の結果」と発言したことに対し、「拡大解釈すべきではない」とくぎを刺し、1期目に掲げた「633公約(経済成長率6%、1人当たりの国民所得3万米ドル、失業率3%以下)」の目標達成に向け全力で取り組むよう求めた。
工商時報も、市民の最大の関心は就業、所得、格差問題にあるとした上で、被雇用者の収入がGDP(域内総生産)に占める比率が10年は44.5%と過去最低となっており、馬総統は「経済成長が所得配分状況を改善する」という主張を見直す必要があると指摘した。さらに、受託生産モデルによる電子製品輸出に過度に依存する経済構造の抜本改革を求めた。
台湾のコンサルティングファーム初のISO27001(情報セキュリティ管理の国際資格)を取得しております。情報を扱うサービスだからこそ、お客様の大切な情報を高い情報管理手法に則りお預かりいたします。
ワイズコンサルティンググループ
威志企管顧問股份有限公司
Y's consulting.co.,ltd
中華民国台北市中正区襄陽路9号8F
TEL:+886-2-2381-9711
FAX:+886-2-2381-9722