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桃園空港、競争力低下が深刻に


ニュース 運輸 作成日:2007年11月2日_記事番号:T00003531

桃園空港、競争力低下が深刻に

 
 経済のボーダーレス時代、人とモノの流れの大幅な増加に伴い、アジア各国が空港整備に力を入れる中、台湾の表玄関である桃園国際空港の地盤沈下が深刻化している。高度成長を遂げる中国との直航が実現していない代償は大きく、中国路線を重視している韓国・仁川国際空港の成長ぶりと比較すると特に明白となる。経済誌「遠見」11月号が報じた。
 

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 各国・地域の主要空港が加盟する国際空港評議会(ACI)の統計によると、桃園空港の2006年の貨物取扱量は169万8,800トンで世界13位にある。しかし、前年比では0.4%のマイナスで、シンガポール・チャンギ国際空港(4.2%増)、上海・浦東国際空港(16.3%増)、香港・チェクラプコク空港(5%増)など、近隣諸国の大空港と比べて成長力は大きく見劣りする。

 また、桃園空港の昨年の年間売上高は130億2,000万台湾元(約460億円)だが、成長率はこの5年間でわずか34%にすぎない。

 この10年、アジアではクアラルンプール(98年)、香港(98年)、上海浦東(99年)、仁川(01年)、タイ・スワンナプーム(06年)と、大型新空港が続々誕生し、北京首都空港もオリンピックを控えて第3ターミナル増設工事が進んでいる。アジアは「大空港時代」に入ったといってもよい。この結果、開港当時(79年2月)は先進的といわれた桃園空港(当時は中正国際空港)は、完全に追い抜かれてしまったのだ。

仁川空港、中国需要で発展
 
 仁川国際空港は今年3月、ACIから2年連続で世界最優秀空港に選ばれた。

 同空港は顧客満足度の向上を最大の運営目標にしており、サービス面での評価は特に高いというが、遠雄集団の趙藤雄董事長は「成功の半分は中国の経済発展のおかげだ」と指摘する。

 仁川空港は日本と中国の中間にあり、ロシア極東部とも近い地理的メリットから、計画当時より「北東アジアのハブ空港」として位置付けられ、今やその機能を存分に果たしている。

 仁川と中国大陸各地を結ぶ便は1週間に約440便、同空港を離着陸する全便数の約3割を占めるという。大韓航空(コリアンエアー)だけで中国全土19都市に週150便が就航していて、上海、北京、香港は1日3便、中国からの観光客や中国に行く欧米の観光客を運ぶ。中国の経済発展によって、06年の旅客数は2,819万人、貨物量は233万トンで、いずれも5年でほぼ2倍に増えた。
 

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地理的優位を生かせず
 
 地理的位置なら台湾も十分な競争力がある。李雲寧中華航空(チャイナエアライン)前董事長によると、桃園空港からアジア域内8大都市への平均飛行時間は2時間55分で、現在東南アジアのハブ空港の役割を果たしているシンガポール・チャンギ空港の4時間55分を大きく上回る。

 こうした優位を持ちながら競争力が落ちている最大の理由は、やはり中国との直航が実現していないためだ。

 04年の米中航空協定によって、米中の直行便数は当時の54便から10年までに249便に増やすことが決められ、米国の航空会社による中国東北部への自由乗り入れも実現した。かつて交通部民用航空局長を務めた張有恒成功大学監理学院院長は、「以前は台湾を通過していたかもしれない貨物が来なくなった。来年ぐらいまでに中国大陸の貨物需要を掘り起こしておかないと、いよいよ競争力が失せててしまう」と警鐘を鳴らす。

 桃園国際空港の活性化実現には、直航は不可欠のようだ。

「不自由貿易港」が実現

 05年12月、総投資額268億元の遠雄集団運営の桃園空港自由貿易港区が誕生した。2年後の今、進出企業は30社のみ、誘致目標の35%にしか達していない。初年度から2年連続3億元の赤字で、趙藤雄董事長は「DHLの引き止めのために、我々がさらに5億元の設備投資をしなければならない」と嘆く。

 運営も企業本位になっていない。政府は自由貿易港区の進出業者に対し、従業員の5%は先住民を雇用するよう規定しているが、葉鈞耀遠雄自由貿易港区董事長によると、新竹科学工業園区ではこの比率は1%で、結果として条件を果たせず政府に罰せられることを恐れて企業が進出して来ない。さらに、人件費の安い外国人労働者の雇用は許可されていない。

 また、密貿易取り締りのため、輸出入倉庫は壁によって周囲と区切ることが決められているため、遠雄は鉄条網付きの金網で囲まなければならなかった。葉董事長はこれについても、「100年前の発想だ。今は無線タグであらゆる貨物を管理する時代で、囲いなど全く必要ない」といらだちを見せる。

目立つ老朽化

 桃園空港の設備の老朽化は、アジア域内に新空港が多いため、今やとても目立つ。 

 開港から28年、この間の大型投資は第2ターミナルだけだった。ある民間航空のパイロットは、「着陸すればすぐ桃園空港だと分かる。20数年間、滑走路の補修を全く怠っていたので振動がひどい」と語る。民用航空局は今年になってようやく北側滑走路の補修に80億元の予算を組んだ。

 空港タウンの実現など、桃園空港を生かした県の発展に独自のプランを持つ朱立倫桃園県長は、「第1ターミナルではコリドーの蛍光灯が点いたり消えたりし、雨が降ると雨漏りしたりと、まるで20年前の空港かと思う」とため息をつく。先進諸国が必ず設けている直通の鉄道・都市交通システム(MRT)も、完成は2012年を待たなければならない。

 朱県長は、桃園空港の改革の第一歩として、現在のような政府管理ではなく、米ダラス空港や蘭スキポール空港などを参考に、運営を専門の企業に委託するべきと提案している。サービスで評価が高いという仁川空港は、民間企業6割、政府4割出資の仁川国際空港公社(IIAC)が運営している。政府が法人を設立、専門企業が管理という形態であれば、サービスのコンセプトが導入されて、かなりの改善が図れるとしている。

 なお、朱県長も桃園空港の発展には中国との直航が欠かせないという立場で、仁川空港の例から「実現すれば、毎週400~500便が中国と結ばれる」と期待する。しかし、現段階では準備さえ全く行われていないということで、課題は大きいと指摘した。