ニュース その他分野 作成日:2012年3月26日_記事番号:T00036169
日本企業が世界最先端の技術を持ち込む形で台湾投資を行う例が急増している。円高や高い法人税率、貿易自由化の遅れといった海外投資誘因を抱える日本企業にとって、台湾の高度な技術力、顧客とサプライチェーンの存在、安価な電力および人材コスト、海峡両岸経済協力枠組み協議(ECFA)などが魅力となっているようだ。経済誌『商業週刊』最新1,270号が伝えた。
日本企業による昨年の台湾投資は過去60年で最高の439件で、台湾に投資する世界各国の中でも最高となった。この中には各産業分野で世界一の技術を持つ企業9社、日本一の技術を持つ企業3社の投資も含まれるという。日本企業の製造分野での台湾投資は2008年56件、翌09年が58件だったことから、今や過去最大の台湾投資ブームが訪れたと言ってよい。しかも、この傾向は今後2〜3年続くとみられている。
東日本大震災が契機
昨年の東日本大震災で台湾官民が世界最高の約200億円もの義援金を送ったことは、日本人が台湾への認識を改める契機となった。産業界の視点は、「半導体、液晶パネル、工作機械、光学の産業クラスターを抱える、世界でこうも日本に似た地域があったのか」というものだった。田崎嘉邦・野村総研台北支店副支店長によると、一眼レフデジタルカメラを組み立てるための部品と工作機械は、台中市内のみで90%を調達できるという。
その上、台湾の技術分野の人件費は中国や東南アジアよりも安い。中国の技術人材の最低人件費は、保険などのコストを含め月7,000人民元(約9万円)、台湾元換算で3万3,000元に相当する。一方、台湾の大卒者の賃金は2万2,000元からだ。
東レ、ビジネススピードが向上
液晶ディスプレイの導光板向けなどの表面保護フィルムで世界65%のシェアを握る東レは、今年6月に同製品の海外初の生産工場を南部科学工業園区路竹園区(高雄市)に完成させる。現地法人、東麗尖端薄膜の久保田浩一総経理は、投資先を当初中国で考えていながら台湾に決めた理由について、「導光板の非常に強い顧客(奇美実業、輔祥実業など)があったためだ」と語る。
久保田総経理によると、従来、台湾の顧客が製品のテストを求めた場合、日本との往来に3日かかり、1週間後にようやく反応を受けられた。しかし現在は電話ですれば直ちに顧客と会え、材料に対する要求を直接つかむことができる。
同社は台湾で顧客と共に新製品の技術開発にも注力する方針で、また、中国市場でのフィルム需要の増大に応じて、台湾企業との提携で中国に進出することも検討している。同社のこうした動きは、台湾液晶パネルサプライチェーンの競争力向上に大きく貢献する。
「5年以内に日本に追い付く」
リチウムイオン電池用電解銅箔で世界シェア首位40%の古河電工も、昨年、同製品初の海外生産工場の雲林科技工業区への設置を決めた。5年以内に技術で日本に追い付くことを目標とする重要拠点との位置付けだ。
同社は、韓国、カナダ、フィリピン、マレーシアと比較した上で台湾を進出先に選んだ。電力の供給安定と費用の安さ、人材の質、コスト、過去14年間のハイエンド銅箔の生産実績が決め手だった。銅箔はECFAのアーリーハーベスト(早期の実施・解決項目)による関税の引き下げ品目に入っており、中国市場への輸出に際し関税が従来より12%低下した。
「リチウム電池川上材料の技術向上に貢献する。台湾の同産業にとってのマイルストーンだ」と、工業技術研究院産業経済・趨勢研究センター材料研究部の呂学隆アナリストは、古河の投資を高く評価している。
中部科学工業園区(中科)虎尾園区(雲林県)で先月、液晶パネルカラーフィルター用カラーレジストの生産に入ったJSRは、顧客の友達光電(AUO)、奇美電子(チーメイ・イノルックス)との技術者の交流や製品の共同開発を希望している。AUO、奇美電のそれぞれの需要に応じることで、台湾液晶パネルメーカーの製品力向上への貢献が見込まれる。JSRは、将来的には台湾パネルメーカーと共に中国に投資し、中国での需要にも対応したい考えだ。
ECFAも強み
かつて日本に8年間留学し、モーター、エアコンからモスバーガーの展開と、あらゆるビジネスで日本企業との提携経験を持つ東元集団の黄茂雄会長は、日本企業が海外投資を行う理由に▽利益▽世界展開▽相互補完できる提携パートナー▽特別な優遇条件──を挙げ、台湾は優遇条件としてECFAがあり、この4点のすべて満たせると語る。
黄会長はその上で、日本企業による先端技術の台湾投資拡大を、台湾の今後5年、10年の競争力向上に役立てるべきだと提言している 。
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