ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム グループ概要 採用情報 お問い合わせ 日本人にPR

コンサルティング リサーチ セミナー 経済ニュース 労務顧問 IT 飲食店情報

善意の5千元で手術、恩人医師と6年ぶり再会


ニュース 社会 作成日:2012年3月27日_記事番号:T00036171

善意の5千元で手術、恩人医師と6年ぶり再会

  入院して手術すれば簡単に治る虫垂炎(盲腸炎)だと言われても手術費用が払えないからと薬で紛らわせようとする患者家族に、医師がそっと5,000台湾元を握らせた──。所得が増えれば増えるほど、人のために差し出せなくなっていないかと自問した実体験を「雲林での忘れられない一夜」と題してインターネット上に書き記し、感動を巻き起こした医師が23日、手術のおかげで危機を救われた元患者と6年ぶりの再会を果たした。

 2006年のある日、台大医院雲林分院に勤務していた江文莒医師は救急病室の夜勤当番となっており、あふれる患者を流れ作業のように診察していた。その中の1人、温さんに「8割方盲腸だから手術ね」と告げると、奥さんが「絶対に盲腸?」と切り返してくる。カチンと来た江医師がCT(コンピュータ断層撮影)を実施し、「9割方だ」と告げても温夫妻は「薬でいいんじゃない?」と言うことを聞かない。

 頭に来た江医師が、責任が持てないと迫ると、奥さんが「実はお金がないんです」と切り出した。夫に働いてもらわないと3人の子どもを食べさせられないという。開腹手術の費用は3,000元だが術後1週間は入院しなければならない。腹腔鏡手術なら回復は早いが自己負担で2万元かかる。そこで江医師は、補助金がいくら出るか確認できてから手術方法を決めることにして、その晩を乗り切れるよう痛み止めを処方した。

 江医師が明け方の会議で「あんなに貧しい人がまだいるんだな」と漏らすと、同僚から「病気で命を落とすならまだしも、貧しいという理由で死なせてはいけない。とりあえず手術をして、お金のことは後で考えろ」という答えが返ってきた。江医師は頭を殴られたようなショックを受けたという。

 自分にとってはちょっと豪華な食事1食分にすぎない額で温さんを助けられる。給与が今の半分だったころにも貧困児童の里親支援をしていたし、奨学金をもらっていた学生時代でさえアルバイト代1カ月分を寄付していたのに。江医師はさっそく、温さんの病室へと走り、5,000元を手に握らせた。夫妻は遠慮したものの、少しずつでも返すと最後には受け取った。

 それから6年、雲林分院8周年パーティーに江医師が出席すると聞いた温さん夫婦は、「ありがとう」と伝えるために仕事を休んで駆け付けた。江医師は「患者には言い出せない事情があることを気付かせてくれて感謝している」と語り、素敵な赤ひげ先生ぶりを示したのだった。