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台湾元、弱さ顕著に


ニュース 金融 作成日:2007年11月8日_記事番号:T00003637

台湾元、弱さ顕著に

 
 台湾元の弱さが顕著になっている。今年は為替市場で米ドルの下落が進み、各国通貨の年初来の対米ドル上昇率は、カナダドルの28.2%を筆頭にブラジルリラが23%余り、日本円も5.1%上昇した。一方、台湾元の上昇率はわずか0.7%と域内最低水準にとどまっている。台湾元の目減りと低金利の「ダブル安」で中央銀行が批判を受けているが、同行は大局的判断から現在の「ゆっくりと時間をかけて上げる」方針を続ける見通しだ。8日付工商時報が報じた。
 
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 アジア太平洋地域の通貨の、今年の対米ドル上昇率はフィリピンペソが最高の13%で、インドルピー、タイバーツ、ニュージーランド(NZ)ドルも10%以上の上昇を記録した。今年は米ドルが下落した年と言えるが、上昇幅0.7%の台湾ではほとんど体感できない。

 この1年対米ドルレートは1米ドル=32.5台湾元前後を行ったり来たりしていて、上下幅は2~3%前後と1元まで届かない。台湾元は米ドルと一緒になって価値を落としているのだ。

 なお、7日の対米ドルレートは、国際原油価格が1バレル=98米ドルを突破したことや、中国の成思危全人代副委員長が、「外貨準備の運用を多様化してユーロなど強い通貨の購入を増やすべき」と発言したことを受けてドル安が進み、台湾元も0.025元とわずかながら上昇して、1米ドル=32.375台湾元と昨年12月8日以来の高値となった。

為替レートさらに悪化?

 域内では金利も安く(台湾銀行の1年定期預金利率が2.26%)、為替とのダブル安となっている。金融業界からは、「こうした状況を放置すれば、域内投資家は台湾元預金を解約して外貨建商品や海外の金融商品に資金を移し、台湾元需要が減少してますます為替レートが悪化する」という懸念の声が上がっている。

 中国信託証券の陳沖在董事長は、「利率も為替レートも低すぎる。為替の上昇幅はアジアの競争相手国と大差がつき、企業にコスト優位に頼った経営をさせている」と指摘する。

 また、今年は物価上昇が顕著で、1年定期の金利分くらいは相殺されてしまっているという批判もある。

 しかし、中央銀行は為替レートも金利も、時間をかけつつ上げる方針だ。批判を受ける一方で、「当面は最良の通貨・金利政策」と支持する評価もある。元安については「内需不振のため、よりいっそう輸出で経済を支えなければならない」という賛成意見があり、金利は急激な引き上げを行った場合、不動産ローンの破たんが続出する恐れがあり、低金利政策に一定の妥当性にがあるとみられているためだ。

直ちに米ドル買い介入

 なお、工商時報は中銀の元安政策を「勇気不足」と批判している。元高を進めれば輸入品が安くなり、物価上昇率を抑えてインフレ圧力を解消できるのに、それをせずに消費者に苦痛を与えているという主張だ。「輸出で良い数字をたたき出したいという、政治的目標を達成させるための元安政策ではないのか?」とも指摘している。

 7日は外資による3億米ドルの台湾元買いがあったが、中銀は直ちに同額の米ドル買い介入を行い、台湾元の上昇に歯止めを掛けた。

 中銀の元安政策は当面続く見通しで、中華経済研究所の呉恵林研究員は、「消費者は海外に行かず、輸入品を買わなければ影響は受けない。その代わり国産品をより多く買えば内需も増やせる」と語っている。