ニュース 政治 作成日:2012年4月23日_記事番号:T00036681
李登輝元総統が「復活」した。1月に行われた総統選挙の投票日前夜、蔡英文候補(民進党)の応援で「台湾は君たちに任せた」と演説し、政治の世界から徐々に身を引くのかと思わせたが、大腸がん手術後の療養を終えた先週、南部に赴いて馬英九政権批判を繰り広げ、引き続き自らの政治主張を社会に訴えていく姿勢をアピールした。

李元総統(中央)が3年前の台風で壊滅的被害を受けた高雄県小林村を最初の訪問地に選んだのは、馬政権の当時の拙劣な対応を思い起こさせる意図もあったのではないか(中央社)
李元総統の今回の南部訪問は、馬政権に対する新たな包囲網を地方から形成することが目的だったとみられる。19日、曹啓鴻・屏東県長に対し、政府系企業・台湾糖業(台糖)が、既にサトウキビをほとんど生産していないのに南部県市で多くの土地を占有したままだとして、「他の南部の県市長と連携して返還を要求すべきだ。わたしも台北から手伝う」と発言した。また、中央政府に権力が集中しすぎているとして、「例えば中央が学費の値上げを打ち出したら、屏東県と高雄市が連合して『われわれは値上げしない』とやったらいい」と語った。最大野党、民進党が首長を務める県市を個別の政策テーマで連携させて、ガソリン・電力料金引き上げで支持率を落としている馬政権に対する圧力を強めることが狙いとみられる。
「1国2地区」に危機感
こうした背景には、2期目を迎える馬政権が、「一つの中国」での中台間の政治合意を目指す姿勢を強めるとの危機感があるとみられる。呉伯雄・国民党名誉主席は先月、胡錦濤・中国国家主席と会談した際に、中台関係について「1国2地区の関係」と発言し、馬政権の今後の中台関係の指針とする意向を示したものと受け止められた。これに対し李元総統は18日、「『1国2地区』は『一つの中国の枠組み』に陥る反民主、権威主義復活の主張だ」と強く批判した。
また、民進党が依然、馬政権を監督する役割を十分に果たせていない中、自らが引き続き先頭に立たねばならないとの使命感もあると考えられる。李元総統は蔡英文氏を勝利に導くことができなかったとはいえ、手術後の不安定な体調を押して行った感動の演説は、台湾団結聯盟(台聯)に比例代表で9%を得票させ立法院で3議席を取り戻させた。依然、台湾本土派に強い影響力を持つことを見せつけたのだ。
李元総統は今後、5月末から学者や元閣僚らを招いての「台湾国家経済発展フォーラム」を3週連続で開催する。李元総統は最近のガソリン・電力料金引き上げが市民生活に与える打撃を懸念しており、市場経済と生活者への配慮のバランスの下、現代の政府の経済政策はどうあるべきかについて討論を行う。李元総統も自ら出席すると伝えられている。また、関係者によると6月中旬以降に再び地方視察を計画しているもようだ。
「時間はもう多くない」
1923年生まれの李元総統は既に89歳。健康状態が気になるところだが、今回、屏東県で恒春生態農場を視察した際は、4〜5階の高さのある鐘楼、綿鐘攬月楼に歩いて上り、鐘を33回ついてかくしゃくぶりを示した。先日はゴルフも再開し5ホールを回ったという。李元総統は、「生きられてもあと4〜5年で時間はもう多くない。いつ台湾を離れることになるか分からないが、皆と一緒に頑張っていきたい」と語っている。
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