ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム グループ概要 採用情報 お問い合わせ 日本人にPR

コンサルティング リサーチ セミナー 経済ニュース 労務顧問 IT 飲食店情報

老舗の茶販売店、日本統治時代はスパイ拠点


ニュース 社会 作成日:2012年5月2日_記事番号:T00036842

老舗の茶販売店、日本統治時代はスパイ拠点

 台北市吉林路に位置する茶販売店「世峰」は、130年の歴史を持つ老舗だ。派手な看板も出さず目立たない店だが、その昔、蒋介石の抗日戦争に重要な役割を果たしたという逸話が伝えられている。

 「世峰」のルーツは中国・福建省アモイの峰圃茶荘にある。抗日戦争の際、蒋介石は台湾における情報収集の拠点を築きたいと考え、峰圃茶荘の二代目、蒋礼池さんに目をつけた。

 蒋介石から極秘に命を受けた蒋礼池さんは、1922年、台湾に峰圃茶荘の支店として「世峰」を開業(当時の位置は総督府近くの重慶南路)。表向きは茶販売店の店主として働き、裏では諜報員として日本軍の情報を集め、国民政府の抗日戦争を陰で支えていたというのだ。かつては政界や警察にかかわる人物が数多く訪れていたらしい。

 まるで、豊臣秀吉の側近として政治や軍事の機密に通じていた千利休をほうふつとさせるエピソードだが、命の危険を冒して貢献したことが評価され、蒋介石から自筆の書が贈られたという。この書は今でも店内に飾られ、当時の歴史を静かに物語っている。

 なお戦後、二代目は表立ってこのことを口にすることはなかったが、70年にこの世を去った際、蒋介石が「抗日英雄」の名で讃えて哀悼の意を表したことから彼の正体が明らかとなった。

 歴史的な逸話もさることながら、「世峰」は販売する茶の質の良さでも知られる。今でも福建省の本家に伝わる焙煎の技術をそのまま受け継いでおり、添加物も香料も一切含まない本物のお茶へのこだわりに妥協はない。

 「台湾の千利休」に思いを馳せつつ、おいしいお茶を求めて店に足を運んでみたくなる。