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アップルがサムスン斬り、鴻海有利に


ニュース 電子 作成日:2012年5月18日_記事番号:T00037187

アップルがサムスン斬り、鴻海有利に

  市場観測によると、アップルはエルピーダメモリへのDRAM発注に続き、スマートフォン次世代機種「iPhone 5」などの液晶パネルもシャープなどに発注し、調達先から初めてサムスン電子を締め出す。アップルが重要部品の供給元ながら最終製品で競合するサムスンと手を切れば、鴻海科技集団(フォックスコン)関連メーカーの受注拡大の後押しになる。日米台連合でサムスンに対抗する構図がますます鮮明になってきた。18日付経済日報などが報じた。


サムスン株が暴落した一方、鴻海は17日、前日比3.5%上昇の85.7台湾元で引けたほか、鴻海関連株も軒並み上昇した(17日=中央社)

 市場観測によると、アップルは「iPhone 5」のほか、ノートパソコン「MacBook Pro」新機種の液晶パネル調達先からもサムスンを外し、シャープ、ジャパンディスプレイ、LGディスプレイ(LGD)に切り替える。iPhone 4と同じく高解像度のRetinaディスプレイを両製品で採用する。

 今度のRetinaディスプレイは酸化物半導体(IGZO)を利用するため、シャープが第8世代、第10世代工場でIGZO技術の導入を急いでいる。アップルがシャープに開発を依頼し、アップル製品の受託生産を受け持つ鴻海がシャープの筆頭株主となることはアップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)の戦略との見方もある。

 Retinaディスプレイ関連では、シャープや友達光電(AUO)にIGZOターゲット材を供給する光洋応用材料科技(ソーラー・アプライド・マテリアルズ・テクノロジー)が恩恵を受ける見通しだ。また、Retinaディスプレイは発光ダイオード(LED)に高輝度が求められるため高効率LEDチップが数多く必要となり、晶元光電(エピスター)、璨円光電(フォルモサ・エピタキシー)、東貝光電科技(ユニティ・オプト・テクノロジー)に対する需要も増える見込みだ。

iPhoneのCPU、TSMCに変更か

 アップルが液晶パネルと同じくサムスンを除外する意図が明確なのが半導体だ。エルピーダ、東芝からモバイルメモリを調達し、パッケージング・テスティング(封止・検査)の力成科技(パワーテック・テクノロジー)も恩恵に預かる。iPhoneの中央処理装置(CPU)の生産委託も従来のサムスンではなく、台湾積体電路製造(TSMC)と協議中だ。証券会社の間では、TSMCが既に受注したとの観測も聞こえている。

 米投資銀行のジェフリーズ&カンパニーによると、iPhone 5は第3四半期に5,000万~6,000万台の在庫が用意され、iPhoneの通年出荷量は1億4,000万~1億5,000万台に上る見通しだ。サプライチェーンでは、MacBook Pro新機種の年間出荷目標は1,700万~1,800万台とささやかれている。証券会社は、前年比5割増の2,000万台も可能で、ノートPC受託生産の広達電脳(クアンタ・コンピュータ)、金属筐体(きょうたい)の鴻準精密工業(フォックスコン・テクノロジー)、可成科技(キャッチャー・テクノロジー)などの業績向上に寄与するとみている。

特許訴訟に幕引き、制裁手段を変更

 今年3月に発売されたタブレット型PC、新「iPad」では最も高価格の部品、ディスプレイとCPUは依然サムスン製だった。サムスン斬りの過渡期でやむを得なかったものとみられる。

 アップルは故スティーブ・ジョブズ氏がCEOを務めていた2011年4月以降、サムスンとの間で特許権侵害訴訟を争い続けたが、跡を継いだクックCEOは先月「和解を望む」と発言している。これは態度を軟化させたわけではなく、調達責任者だったクックCEOが、サムスンへの制裁を自身の得意分野で行うことしたということのようだ。