ニュース 電子 作成日:2012年5月24日_記事番号:T00037295
EMS(電子機器受託生産サービス)世界最大手、鴻海科技集団(フォックスコン)の郭台銘董事長は経済誌『商業週刊』最新1,279号のインタビューで、シャープ出資もすべては韓国・サムスン電子への対抗が目的だと初めて表明した。液晶パネル、メモリー、半導体を一手に手掛ける世界唯一の企業体、サムスンに挑むため、エルピーダの支援先に内定した米マイクロン・テクノロジー、台湾積体電路製造(TSMC)まで巻き込んだ共同戦線構想を練っている。
郭董事長は、液晶パネルでサムスンに太刀打ちできるのは鴻海だけだと言い切る。鴻海のシャープ出資に続き、奇美電子(チーメイ・イノルックス)の経営から奇美実業が6月28日に全面撤退することが決まった。これにより実質的にシャープと奇美電を束ねることが可能になるが、奇美電の経営に関しては「今考えているところだ」と明言を避けた。ただ、液晶パネルの出荷先に、ソニー、シャープだけでなく、米ビジオなど数社を連ねるのも、サムスンと戦うためだと強調した。
郭董事長はまた、日本に頻繁に出向いており、シャープの士気を高めるほか、マイクロンに週2回接触していると明かした。DRAMを経営できるのは世界で3~5社程度で、鴻海は手を出さないが、サムスンだけにはのさばらせないと意気込んだ。エルピーダ問題が解決しなければ、台湾のDRAM業界もどうにもならないと特に関心を寄せ、マイクロン、エルピーダ、台湾メーカー全社でサムスンに挑む構図を望んでいる。
郭董事長はさらに、張忠謀董事長が親戚に当たると述べ、サムスン対抗に欠かせない半導体はTSMCの協力を得たいとの考えも示した。
中国生産は続行
郭董事長は、製品を作るのは環境、コストともに中国が世界で最も優れていると強調した。中国には半導体、トランジスタなど何から何までそろうサプライチェーンがあるためと説明し、もし米国で米アップルのスマートフォン「iPhone」を作るとすれば、すべての部品を持っていかねばならない上、労働者は怠けるから節約のしようがないと語った。
しかし中国では、人件費が来年にも2倍にふくらむ見通しで、若者は工場で働くのを嫌がる傾向があると指摘した。ただ、中国人に管理や制御をさせて、ロボットを100万台導入するなど自動化を進めて対応すればよいし、賃金水準が上がれば中産階級が生まれて内需が潤うと楽観的だ。今後は製造だけ、技術だけの鴻海を脱して、電子商取引に参入してサービスまで手を広げる計画で、中国内需こそが進むべき重要な目標と強調した。
BMWと提携
鴻海は世界10以上の国・地域に工場を擁するが、中国以外への投資は決して順風満帆でなかった。インドでは何年もかけて少なくない投資をしてきたが成功とは言えず、ブラジルは保護主義的で、現地で組み立てるなら重要部品も現地で作らないと関税がかかると嘆いた。こうした中、次なる投資ターゲットはインドネシアとミャンマーだと明かした。
しかし郭董事長の話は中国から離れることはなく、鴻海が中国で、ドイツの高級車、BMWとカーエレクトロニクス分野で提携することも明かした。自動車は今後、電子コストが47%を占める「電子製品」になると考えており、フォードも中国で作らせた方が米国工場より品質がいいと言ったと指摘した。
中国・欧米の景気悲観
中国の景気に関しては、輸出に陰りが見られると指摘した。鴻海の中国事業の輸出額はそれほど変わらないのに、中国の輸出総額に占める割合が今年第1四半期は6.7%となり、前年の5.8%から拡大したためだ。
また、中国の3C(コンピュータ、通信、家電)販売店で提携する独メトロは欧州最大手だと指摘した上で、欧州の景気は本当にひどいと語った。米国についても、必ず量的緩和第3弾(QE3)を打ち出すと思われ、今年11月の大統領選挙を経た来年は景気が悪化するとの予測を示した。
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