ニュース 電子 作成日:2012年6月25日_記事番号:T00037880
IC設計業界2強の聯発科技(メディアテック)と晨星半導体(Mスター・セミコンダクター)が合併を決めた。メディアテックが存続会社となり、手続きが順調に進めば来年第1四半期に世界4位のIC設計企業として新たなスタートを切る。モバイルデバイスの隆盛でカスタマイズ化製品の研究開発(R&D)力が重要になった業界動向をにらんでの決断だ。25日付工商時報などが報じた。
メディアテックは合併に当たり、Mスター株式の公開買い付け(TOB)を2段階に分けて行う。6月25日から8月13日にかけて、メディアテック0.794株プラス1台湾元をMスター1株と交換する条件で、Mスターの発行済み株式の40~48%を買収し、順調に進んだ場合、同様の交換比率でさらに株式を買収する。
台湾IC設計業界で過去最大の合併を実行する理由について、蔡明介メディアテック董事長と梁公偉Mスター董事長は「産業形態が変わりつつあり、新たなライバルも出現しており、合併を通じて国際競争力を高めることができる」と口をそろえた。メディアテックは携帯電話向けチップに強く、Mスターは液晶テレビ用チップで世界首位で、補完効果が期待できる。
IC設計業界は様変わりが進んでいる。アップル、サムスン電子の大手がモバイルデバイスにASIC(特定用途のために設計、製造されたIC)を大量導入し、低コストのASSP(特定用途向け標準化製品)を得意とする台湾IC設計企業は同市場に食い込めないでいる。パソコンが中心だった従来は、各社共通のASSPを設計していればよかったが、モバイルデバイスではシステムメーカーに主導権が移った。台湾ICメーカーは、システムメーカーと協力してASICを開発する必要に迫られている。
また、海外大手チップメーカーがモバイルデバイス向けで特許戦術に打って出る一方、低価格チップが主流の中国では、政府の支援の下、台湾メーカーと遜色のない製品が出現している。市場の二極化が進む中で、台湾メーカーは新たな革新に取り組まない限り、斜陽を迎える恐れが合併の背景にあった。
サムスンの中国製採用が引き金に
そうした中で、2つの出来事が合併の契機となった。
一つはノキアからの2Gチップ受注だ。ノキアは業績不振に見舞われているものの、2G機能フォン(フィーチャーフォン)では依然年間1億台以上を出荷する最大手で、チップ供給メーカーに毎年10~20%の値下げを求めていた。赤字となるため受注意欲が低下した両社に、ノキア側が共同受注を持ちかけたことが合併の導火線になったという。
もう一点は、中国の携帯電話用チップ首位の展訊通信(スプレッドトラム)が、サムスン「ギャラクシーS3」TD-SCDMA版への供給メーカーとなったことだ。メディアテックは3Gスマートフォン用チップで、現在リーディングカンパニーで将来も有望なサムスンからの受注を目標にし、TD-SCDMA/WCDMA向けが最も有望と考えていた。ところが予想に反してサムスンはコストパフォーマンスに優れたメディアテックではなく、中国政府の支援を受ける展訊通信を選択。これによって蔡メディアテック董事長は、チップ市場での競争はもはやコストパフォーマンスではなく、規模のさらなる拡大と研究開発(R&D)の深さ、機能統合力が海外大手からの受注に重要だとはっきりと認識し、こうした点に強みを持つMスターとの合併を決めたという。
製品ライン拡充に有益
バークレイズ・キャピタル証券の陸行之アジア・太平洋地区主席半導体アナリストは、メディアテックとMスターの合併が成立した場合のメリットについて、▽価格競争圧力の低下▽重複するR&Dへの投入金額削減▽部品調達における価格交渉力の強化▽Mスターの製品カスタマイズ化力の吸収──を挙げた。メディアテックとMスターは製品ラインの重複性が極めて高く、メディアテックが今後、MスターがスマートフォンチップのR&Dに投入するはずだった資金をハイエンドスマートフォン向けに充当するのであれば、製品ラインの拡充に有益だと指摘した。
合併後両社は、製品・顧客の選択が課題となるとみられる。なお、反対する株主が現れるなどして合併が成立しない恐れも残されている。
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