ニュース 社会 作成日:2012年7月23日_記事番号:T00038384
台北市信義区にある台湾鉄路(台鉄)の整備工場「台北機廠」は、日本統治時代の1935年に鉄道技師、速水和彦氏の設計により建設されたもので、現在でも現役で利用されている。しかし同工場は桃園県楊梅市への移転が決まっており、今年末で77年の歴史に幕を閉じることになる。
なお台北機廠は、日本人の入浴文化によって大浴場が導入され、直径5メートル、深さ1メートル25センチの円形浴槽2つを備えていることで知られる。長年にわたり1日の仕事を終えて油汚れと疲れを落とす台鉄職員に親しまれてきたが、こちらも来年からは釜の火が消える。
台北機廠の頼興隆廠長によると、かつては各家庭に温水設備を設置する余裕があったわけではなく、同工場に勤める整備士の全員が工場内の浴場で一風呂浴びてから退勤できるということは、非常に恵まれた「福利厚生」だったそうだ。
同工場で働く従業員は全盛期には2,000人を超えた。閉鎖を間近に控えた現在でも約1,000人が勤務している。このうち100人を超える男性従業員が今も毎日浴場を利用しており、湯に浸かりながら仕事の話や他愛もないおしゃべりに花を咲かせる「裸の付き合い」は台北機廠の独自文化として息づいている。
台北機廠の閉鎖は、台湾高速鉄路(高鉄)の開通に伴う台鉄の経営悪化が大きな要因となっている。年々膨れ上がる赤字の削減を目指し、地価の高い信義区に広大な敷地を持つ同工場に目が付けられた。閉鎖後には商業施設が開発される見通しだ。
しかし鉄道関係の専門家や文化人などからは、同工場全体を歴史的建造物として保存すべきだとして再開発反対の声が上がっている。これに対し台北市は、既に史跡に指定されている浴場施設のみを保存し、それ以外の部分は再開発する方針を示しており、対立が深まっている。
歴史的記憶の保存と再開発。難しい選択だが、一度失われた記憶は二度と戻ってこない。慎重に議論を重ねてほしい。
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