ニュース その他製造 作成日:2012年8月9日_記事番号:T00038719
台湾では5カ月連続で輸出額のマイナス成長が続く中、9日付聯合報は「受託生産に強く依存する台湾の製造業は、受注に対する『待ちの姿勢』が宿命となっており、世界的な不景気や産業構造の変化のさなかにあって積極的な打開策を打ち出せていない」と指摘。これについて米研究機関、SRIインターナショナルのカーティス・R・カールソン社長は、台湾は▽人材の断絶▽産業構造の転換▽研究開発(R&D)費用の分配と執行──という3つの課題を抱えており、「今、産業の変革を行わなければ深刻な低迷期を迎える」と警告した。
カールソン社長が総統府の月例会議で行った警告に、馬英九総統は「実際の状況どおりだ。深く耳を傾け、改善を図っていきたい」と語った(8日=中央社)
台湾の製造業は、早朝に中国の工場と、昼間は欧州の顧客と、夜は米国顧客と会議を行い、「1日中受注が途切れない国」と呼ばれた。しかし、欧州債務問題によって世界経済がダメージを受け、「米国は衰退、欧州は混乱、中国は期待されたほど良くない」といった苦しい状況の中においても、サプライチェーンの川下にある台湾メーカーは依然、受注を待つ以外になく、主導的な対策を打てていない。
また2010年にアップルがタブレット型パソコン「iPad」を発売し、さらにハードウエアからソフトウエアまでのすべてを掌握する同社のビジネスモデルに、従来型のパソコンブランドが苦戦する中においても、長期にわたりいわゆる「Wintel(ウインテル、WindowsOSとインテルCPUの組み合わせ)」体制に依存してきた台湾の電子業界は、ただ状況を見守るのみとなっている。
一方、受託メーカーからブランド・メーカーへの転換に成功した数少ない例である宏達国際電子(HTC)も、今年1〜7月の売上高が前年同期比800億台湾元(約2,100億円)減と、台湾の電子製品輸出低迷の大きな要因となっている。
中堅企業の自社ブランド化を促進
これに関連して経済部工業局も同日、「推動中堅企業躍升計画(中堅企業の躍進促進計画)」を提出。3年以内に中堅企業100社を育成すると表明した。
陳行政院長によると、同計画では第1段階で重要技術開発に高い潜在力を持つ企業を選抜し、これら企業が自社ブランドを立ち上げられるよう政府が人材、資金面で協力する。そして第2段階として、一定の発展を遂げたこれら企業の一部を、世界的に知名度の高い企業へと育て上げる計画だ。
「人材流出に歯止めを」
SRIのカールソン社長も、「台湾が得意とする低コストで高品質の製品を作れば安泰といった時代は過去のものとなった」と指摘した上で、台湾の産業は大部分がサプライチェーンの川中に位置し、イノベーション力が体系的に不足していると語った。さらに産業のイノベーション力向上には人材が必要だが、台湾は出生率が低く人材流出も深刻だと警告した。
同日、国民党中央常務委員会でも、人材を台湾に引き止めるため、賃金を含めた環境の改善に努めるよう政府への提案が行われた。台湾経済研究院(台経院)の孫明徳・景気予測中心主任は「外国人労働者、賦税、土地などに関する規制をさらに緩和しなければ、外からは人が来ず、中の人間は外に出て行きたくなるだけだ」と警鐘を鳴らした。
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