ニュース 電子 作成日:2012年8月21日_記事番号:T00038927
鴻海科技集団(フォックスコン)の郭台銘董事長が46.48%を出資した、シャープとの共同運営の堺ディスプレイプロダクト(SDP、旧シャープ)は、第10世代液晶パネル工場の稼働率が3月時点の30%から50〜60%に回復した。鴻海出資の効果が早くも表れた形だが、今年末時点の目標80%にはまだ距離がある。アップルの受託生産メーカーから戦略提携パートナーとして地位を高めたい鴻海にとって、シャープへの出資は先端液晶パネル技術を補う目的があるが、提携が順調に進むかはシャープとの企業文化の違いがネックになるという指摘が出ている。経済誌『商業週刊』最新1291号が伝えた。
シャープの今年第2四半期の液晶テレビ販売台数は前年同期比49.4%減の166万台で、第1四半期の35%減からさらに悪化した。これは日本の液晶テレビ市場全体の縮小幅11%を大幅に上回る数字だ。主流の32インチで損失が続いたため、今年は高価格で粗利益率の高い製品に注力したが、そうした製品が主流サイズ以上のスピードで販売シェアを落とした。液晶テレビが唯一成長している新興市場では、シャープは出足の鈍さで商機を逸してしまった。
6月30日時点でシャープの短期債務は7,188億円で、帳簿上の現金および短期流動資金の3.3倍に上る。資金難から追加の人員削減を行うとも伝えられている。
一方、鴻海も最近、シャープへの出資比率を当初の9.9%から20%程度への引き上げを求めていると報じられた。出資比率が10%以上になると会社の解散を裁判所に請求できる権利が生じ、経営への影響力を強めることができる。傘下の液晶パネル大手、奇美電子(チーメイ・イノルックス)でも、3社合併から2年で奇美集団の勢力を最終的に一掃した郭董事長の手法から見て、当然狙う方向と考えられる。
シャープと鴻海は、出資条件の見直しなどについて再交渉を進めた上、今月末に共同声明を発表する方向だ。シャープの苦しい経営状況から、提携は今後鴻海に有利な形で進む可能性が高い。
取引先から不満続出
しかし鴻海にとって、シャープとの提携は、同社の財務問題ではなく、企業文化の違いが最大の課題になる可能性がある。
「赤字で引責辞任した社長が会長に昇格する会社なんて、見たことあるか?」──。あるハイテク業界関係者は、今年3月に社長を辞任した片山幹雄氏が4月に会長に就任したことを指して、シャープの自浄能力に疑問を投げ掛けた。
シャープと10年以上取引を行っている日本の部品メーカーは、他の顧客企業とは半月から1年のスパンで製品計画を協議できるのに、シャープだけは3カ月先までしか分からず、それ以降については誰も決められないため「非常に頭が痛い」と嘆く。「誰に決定権があるのか常に分からない」との声もある。社内の組織重複や複雑な派閥の存在のため、製品出荷の3カ月前になって部品の使用が決まることがあるという。
サプライチェーン見直し必須
鴻海にとって、日本独特の産業文化にも注意が必要なようだ。シャープも日本の大手銀行、生保などの金融機関が安定株主として出資している。これら金融機関が安定を最重視したことが、日本企業の経営姿勢を保守的にしたことは否めず、大幅な改革を阻んできた。外国人の経営参画には、有形無形の反発が少なくないことが予想される。
また、日本の大手企業はサプライチェーンとの結び付きが強く、順調なときは問題ないものの、いったん下り坂に差し掛かると高い契約額が大きな負担となる。シャープと鴻海の提携では、既存サプライチェーンとの高すぎる契約額を見直すことが早期に取り組むべき課題となる。
さらに、日本人の排外的な心理の存在もある。ある台湾人の総経理は、かつて日本企業を買収した際に、「台湾人の下で働くのが嫌」との理由で、幹部陣から一斉に辞表を提出されたことがあるという。社員の心をいかに掌握するかは重要な鍵となりそうだ。
『商業週刊』は、英テスコの撤退、フォードによるマツダの持ち株比率引き下げなどの例を挙げつつ、「チンギス・ハーンも攻め落とせなかった日本」を「現代のチンギス・ハーン」と呼ばれる郭董事長が攻略でき、「鴻海帝国」に新たな活路を切り開けるのか注目されると結んでいる。
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