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北投ロープウエー、着工に前進


ニュース 運輸 作成日:2012年12月22日_記事番号:T00041180

北投ロープウエー、着工に前進

 台北都市交通システム(MRT)新北投支線の新北投駅近くから北投温泉を通り、陽明山までを結ぶ北投ロープウエー着工に道筋が付いた。台北市の建設決定から約20年を経て、環境影響評価(環境アセスメント)が21日、始発駅の位置変更などの条件付きで審査を通過した。観光振興に弾みがつくと期待される一方、地元住民は安全性、交通渋滞、騒音などを懸念しており、反対団体は行政訴訟で決定取消を勝ち取ると意気込んだ。22日付中国時報が報じた。

 北投ロープウエーは、MRT新北投駅から徒歩10分の山下駅から、龍鳳谷駅、陽明公園駅を通り、山上駅まで4.8キロメートルを結ぶ。8人乗りのゴンドラで毎日10時間運行する計画だ。北投温泉や陽明山の一帯は見どころの多い観光エリアとして人気があるが、山なりの道を徒歩で散策するか、路線バスやタクシー、自家用車で移動するしか交通手段がなかった。

 もともと山下駅の予定地だった北投公園は、「世界で最も美しい図書館25」に米サイト「Flavorwire」によって選出された木造建築の台北市立図書館北投分館や、日本統治時代に公共浴場だった建物を利用した北投温泉博物館などを擁するため、影響緩和のため北投2号公園前への変更が条件付けられた。景観を配慮し、山上駅のフードコート設置は認められず、第三者機関への支柱や駅の安全審査依頼なども条件とされた。

 台北市政府環境保護局は、北投ロープウエー予定地は台北市だけでなく、陽明山国家公園の管轄部分も含まれるため、陽明山国家公園管理処と台北市都市発展局の審査・認可が着工に必要と指摘した。

住民の生活環境に影響も

 環境影響評価審査当日、会場外には反対住民が集結し、市民の声を取り入れない市のやり方は「ブラックボックスに等しい」と叫んだり壁をたたいて抗議した。

 台湾蛮野心足生態協会の陸詩薇弁護士は、第三者機関の信頼性に疑問を呈し、行政訴訟を通じて条件付き審査通過の取り消しを求める考えを示した。

 長年にわたり台湾の公共工事をめぐる環境問題に取り組んできたエンジニアの王偉民氏は、北投ロープウエーの支柱下部はいずれも表土層と崩積層内にとどまり、地盤は非常に弱いと指摘。支柱T3とT4の距離は495メートルと、標準の300メートルを大きく超え、ロープウエーの重みを支えきれず、風力に抵抗できないと懸念を示した。一部支柱は猫空ロープウエーの2倍の高さになることも指摘した。

 北投区の里長(町内会長に相当・公選職)らは住民の生活環境が壊されるし、環境破壊にもつながると訴えた。

郝市長の実績に

 一方、台北市温泉発展協会の周水美・名誉理事長は、ロープウエーでの観光振興は北投市民の多くが待ち望んできたことだと強調した。

 郝龍斌台北市長は、環境影響評価委員の判断を尊重するとのみコメントした。歴代市長が果たせなかった北投ロープウエー構想が実現すれば、郝市長にとって大きな実績になる。

 79年に浮上した北投ロープウエー構想は93年(当時・黄大洲市長)に決定され、97年(陳水扁市長)に台北市がBOT(建設、運営、譲渡)方式での開発を引き継いだ。01年に行政院環境保護署(環保署)が環境影響評価は不要と判断し、05年(馬英九市長)に儷山林休閒開発事業と開発契約を結んだが、翌年に収賄事件が明るみに出て頓挫していた。その後、10年(郝市長)に台北市環保局が環境影響評価の実施を提言し、12年8月の第1次、11月の第2次を経て、今回の条件付き通過で開発にめどが立った。

【表】