ノートブック型パソコン受託生産2位の仁宝電脳工業(コンパル・エレクトロニクス)の許勝雄董事長は5日、今年決定したベトナムへの進出に当たって、上下流の協力メーカー約50社も同時に進出するという計画を明らかにした。鴻海精密工業、仁宝と相次ぐ台湾大手電子メーカーのベトナム進出は、中堅部品メーカーに新たな商機を提供するとともに、これまで未成熟だった同国の電子関連産業のすそ野形成を促す意味を持つ。6日付工商時報が報じた。
仁宝は今年7月、ベトナム北部、ハノイ近郊のビンフック省に5億米ドルをかけてノートPCの生産ラインを整備することを決めている。許董事長によると、2009年第1四半期から量産を開始、5年以内に生産能力を年間2,500万台まで増やす計画だ。その時点での仁宝全体のノートPC生産能力は5,500万台を予定しており、ベトナム拠点は全体の45%を担うことになる。
鴻海、8月に生産開始
仁宝のベトナム強化は、「中国の投資環境が既に悪化している」(陳瑞聡同社総経理)ためだ。
中国では来年から、外資系企業に対する優遇税制の廃止を盛り込んだ企業所得税(法人税)制度の改正や、「世界最高水準」の労働者保護をうたう「労働合同法(労働契約法)」の施行が決定しており、人件費のさらなる上昇が予想されている。
このため、人材、税金、用地など、生産拠点としての条件が中国よりも優れているベトナムがハイテク産業の注目を受け始めており、この8月、鴻海精密工業がいち早く生産を開始した。陳瑞聡総経理は、「これを見て、ベトナムでの生産計画の進度を早めた」と語っている。
許董事長によると、仁宝は327ヘクタールの用地取得の認可を受け、仁宝はこのうち100ヘクタールを生産ラインに使用し、その他の207ヘクタールは協力メーカーの工場建設と複合生活区に充てたい考えだ。
投資促進へ好循環
大手メーカーの動向は、数十あるいは数百の協力メーカーの動向にも影響を及ぼす。仁宝の意向に従って、ノートPC用のプリント基板業者、瀚宇博徳(ハンスターボード)や金像電子(ゴールド・サーキット・エレクトロニクス)が進出する確率は高いとみられる。
先日は奇美電子(CMO)が鴻海や仁宝の要望に応じて液晶パネルの後工程モジュール(LCM)組立工場を設置する方針を表明し、協力メーカーと共にベトナムに一大パネル製造エリアを建設したいという意向を示した。こうしたケースで今後、大手と共に部品メーカーの進出が相次ぎそうだ。
ベトナムは依然、縫製や製靴など労働集約型の従来型産業が中心で、これまではすそ野産業の未発達、およびインフラの未整備が、ハイテク企業が進出する上でのネックとなっていた。台湾部品メーカーの進出によってすそ野が形成されれば、「中国プラスワン」を求めるハイテク企業の投資がさらに活発化する可能性がある。