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馬祖のカジノ開業19年にも、管理条例を閣議決定


ニュース 商業・サービス 作成日:2013年5月3日_記事番号:T00043466

馬祖のカジノ開業19年にも、管理条例を閣議決定

  台湾の離島でのカジノの管理法規「観光賭場管理条例」の草案が2日行政院会(閣議)を通過し、昨年7月にカジノ事業解禁の住民投票を可決した馬祖列島(連江県)での実現に大きな一歩を踏み出した。葉匡時交通部長は「立法院での早期可決を含めすべて順調に行けば、2019年にカジノを有する台湾初の国際リゾートビレッジが開業する」と期待感を語った。ただ、馬祖でのカジノ計画は、中国政府が住民の利用を認めるかという変数があり、台湾側の思惑通りに進むかは予断を許さない。3日付聯合報などが報じた。

 同条例は風紀に厳しい台湾らしく、カジノの利用規定を細かく定めたのが特徴だ。20歳未満や、生活保護受給者、破産者、多額の借金を持つ者、カジノへの債務を返済していない者などは入場を禁止される。また、配偶者や子女、兄弟姉妹など4等親内の親族や、1年以上同居した人物からブラックリストへの登記申請が行われた場合も入場できない。さらに、現地住民の入場についても、地方議会の議決によって禁じることができるとした。規制対象者を利用させたカジノに対しては150万台湾元(約500万円)以上、750万元以下の罰金が科される。

 また、カジノで大金を使い果たして生活や家庭が破綻する者が出ないよう、場内でのクレジットカードやデビットカードによる賭け金借り入れの禁止や、現金自動預け払い機(ATM)を設置しないことも定められた。ただ、カジノを出ればホテルのATMでキャッシングすることが可能だ。

 こうしたシンガポール以上に厳しい規制を行うことについて、反賭博団体からは「実際の執行は困難で意味がない」との批判が出ており、市民からは「海外のカジノに行った方がよい」との声も聞かれた。

地方自治体に7%を納税

 管理条例ではこのほか、カジノ事業者は毎月売り上げの7%を賭博特別税として地方自治体に、中央政府にも「賭博許可費」を納付することが定められた。中央政府に対する納付金は最初の15年までが7%で、25年までは8%、26年目以降は9%となる。

 得られる税収額の見通しを問われた葉交通部長は明確には答えず、「シンガポールの例では1カ所のカジノから毎年約150億〜200億元の税収がある」とのみ語った。

 カジノ利用者に対し、20年間勝ち金への課税を行わないことも定められた。

マカオの方が魅力

 マカオ特別行政区政府の統計によると、2011年のカジノ産業の売上高は2,702億マカオパタカ(約3兆3,000億円)で前年比で42%成長した。カジノ産業の盛況を受けてマカオ政府は住民に「ボーナス」を分配しており、昨年の支給額は1人当たり7,000香港ドル(約9万円)余りに達した。

 馬祖がこうした成功例を倣おうとするのは当然だが、最大の課題は中国客を呼び込めるか否かだ。馬祖は福建省福州に近い沿岸部に位置しており、カジノ計画も中国からの利用客を当て込んて立案している。しかし中国は法律で賭博を禁止しており、先月、中央政府レベルで馬祖のカジノ計画に反対しているとの観測が伝えられたところだ。台湾政府は「中国人客だけがターゲットではない」との立場だが、馬祖は交通が不便なため、台湾からの利用客は、規制の強い馬祖よりはむしろ観光地としての魅力もあるマカオを選ぶとみられる。中国人客を呼び込めない場合、運営に大きなマイナスとなるのは確実だ。

 なお、マカオの場合は高校を卒業してカジノで働けば台湾元換算で1カ月7万〜8万元の給料を得られるため、多くの若者が大学に進学せずにカジノで働いている。こうした現象はマカオの長期的発展に必ずしもプラスとならないとの指摘が出ており、馬祖もカジノが実現した場合、同産業に極端に依存する懸念がある。

【表】